「おれ、めっちゃ出雲ちゃんのこと好きやねん」

聞き慣れたいつもの台詞と共に私に向けられたのは、人当たりの良さそうな笑顔。


だけど、細められた瞳を開けたら、そこに潜むのは、深淵のような茫洋とした光だということを私は知っている。



薄っぺらい笑みで本当の気持ちを隠したまま私に告げる言葉は、どれほどの意味があるの?



心はそこに無いと分かっているのに、そう言われる度に、海の中にいるような息苦しさを覚える。

衝動に負けて、呼吸を求めたら、開いた口から入り込んで、全身を侵される。



そうして、きっと、私はアンタに溺れてしまうんだわ…。


だから、私は決してアンタの事を好きだなんて言わない。

認めない。


「アンタなんて大っ嫌い」

僅かな酸素を取り込むように口を開く。


「そうかぁ。そりゃあ残念やなぁ」

ちっとも残念なんて思ってない声音で笑みを深くする。

「それでも、オレは出雲ちゃんのことが好きやで?」


コポリ…。


私の身体が、更に深く、深く水中に沈んでゆく音がした…。



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