((ヒロインの苗字は古谷で固定です))




「古谷なまえです。もうすぐ誕生日です」

古谷なまえは、5月に誕生日があるらしい。誕生日です、のあとに人好きのする顔でクラスメイトを見回して、最後に私と目があった。

「よろしくお願いします」

そのまま終わった自己紹介だったが、私が覚えているのは古谷なまえのことだけだった。


今年も長次や留三郎と同じクラスになった。他にも何人か仲の良い奴もいる。2年生も楽しくなりそうだった。
もう5月になって、学ランでは暑すぎて過ごせない。シャツとズボンの裾をまくりあげて廊下を歩いていると、何人かの先生が嫌な顔をした。

「やー、暑いなあ」
「外でのバレーは辛いなあ」
「そーか。私は外でするのに慣れているから。慣れれば楽しいぞ今日昼休み一緒に」
「違う違う」
「何が」
「小平太、バレーは別にどうだっていいんだよ」
「問題は、女子の有無だよ、女子の有無」
「女子がどうしたんだ」
「例えばな、俺がボールを拾う、長次がトスする。それをお前が」
「アターック!!」
「そう。その時にだ」
「ナイス、小平太」
「っていう男の無愛想な声援か」
「わあ!!小平太くんかっこいいー!!」
「っていう女子の黄色い声か、お前どっちがいい」
「あー、そういうことか」
「そーいうことよ」

留や他のやつが細川だとか松本だとかの名前を出しながら盛り上がっている時、私はいつも古谷なまえのことを思い出す。
古谷なまえなら、そういうときどんな反応をするのだろう。
わー、すごいなあと言いながら手を叩くきがする。私がなまえー!!見てたかー!!と叫べば笑って、見てたよーと返してくれるだろうか。


「あ、小平太ー」

そんなことを考えながら歩いていると、目の前の窓からいさっくんが顔をだした。

「久しぶりだないさっくん」
「え、昨日会ったじゃない…」
「そうだったか」
「まあ、いいや。あのさ小平太、地理の教科書持ってない」
「あるぞ、ロッカーに」
「よかった、次の時間貸してくれないか」
「いいぞ」
「あれ、伊作、お前地理とってたっけ」
「あー、僕じゃないんだよ。この子が」

いさっくんの視線の先には化粧が濃いめの女子がいた。

「忘れたみたいでさ」
「あーなーるーほーどーねー」
「なんだよ留さん」
「べーつに」
「小平太、後で取りに行くよ」
「わかった」

いさっくんとその子がよかったーだとかありがとうだとか話している。そういえば古谷なまえは、化粧らしい化粧をしているのだろうか。

「あれ、伊作の彼女かな」
「あー、ちょっと噂になってたよな」
「え、そうなの。まあ可愛いもんなあの子」

「なあ、長次」
「…なんだ」
「古谷なまえの誕生日って、いつだ」
「…本人に、聞け」
「そーだな」


古谷なまえは、私が決めたアタックにどう反応するのだろう。化粧はよくするのか。いろいろ知りたいことがあった。


「古谷なまえ!!」
「え、あ、何、七松くん」
「誕生日って、なんにちだ」
「え」
「自己紹介で言ってただろう。5月って。誕生日って、なんにちだ」
「ああ、それね」

もう終わっちゃったよ。


目の前でやっぱり人好きのする顔の古谷なまえが、私の顔を見て、あはははと笑っていた。



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我が親愛なる暴君様へ02


11/0525

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