((よろしくない状況、注意!))((現パロ))





月のない夜、部屋の明かりはすべて消して、わたくしは彼の目の前に立っているのです。
脇腹がすうすうと心細く、まるっきり無防備な状態で、肩を震わせて、歯を鳴らし、相当惨めな風情なのだと思います。
暗がりに、彼の目だけが光ります。サーチライトのごとくわたくしを照らし、わたくしは追いつめられています。


ギシリ、とベットのスプリンクを鳴らし、彼が立ち上がりました。同時にわたくしは一歩後退したのですが、ビリビリに破かれてしまった衣服に足を取られ、みっともなくひっくり返ってしまいました。
足が、大きく開きました。


汚いなあ


彼は決してそれを言いません。それを言わずに伝える術をしっています。
わたくしは申し訳ありません申し訳ありませんと平謝りします。彼の目など見ることはできません。

肩の震えが、一層激しくなりました。


「ねえ、なまえ、」



ここ最近、彼の言葉はすべてうつろでございます。しかし今日のそれはこの底冷えする空間に、妙にきっぱりと響きました。

「今日は月がでていない」


わたくしにはその言葉の意味を理解することができませんでした。けれど彼がいなくなってしまえば今度こそ、肩の震えが止まらなくなることだけは、分かっていました。
それを伝える術のないわたくしは、口を彼にふさがれるまでずっと意味のない申し訳ありませんを、まるで喜劇さながら、吐きだし続けるのです。




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彼だけが見ていた

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