((現パロ))




窓の外では、空気がゆらゆらと鬱陶しく揺れているのだろう。
文明の利器、クーラーというやつは、ちっともその気配を見せないくせに、夏らしい風情で職員室を冷やしている。
カーテンを閉め切り、鍵までかけた。女は、夏にふさわしく体中に汗をかき、息をみだしている。肩先でそろえられた黒髪が、いやに涼しげだ。

乱れた服を取り上げ、身につけた。ピンク色のポロシャツ。昔、顔も思い出せないような女に、贈られたものだった、はずだ。

ふいに、女が仰け反った。あはは、くっきりと見せつけられた喉が、揺れている。

「せんせい」
「……なんだ」
「あたし、いま、とっても、しあわせ!」
「……そうか」
「そうなの」

その割には、女の目からは涙が流れている。
しかし、そんなことはどうでもいいことだとばかりに、目を背け、さっき放ったベルトを探すことに専念した。

「ふしぎ」
「……」
「かなしくなくっても、なみだは、ながれるんですね」
「…本当は、悲しいのかもしれないぞ」
「あはは」

女の笑い声は、耳になじんだ。
ようやく身なりを整え、ビニル袋に入れたコンドームを用心深く、鞄にしまった。



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蝉の転がる校庭

10/0503

季節はずれもいいところ

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