ルフィが泣いている。
涙と鼻水で、顔をぐじゅぐじゅにして、醜い嗚咽を漏らして、体全体を使って、泣いている。
そんなルフィを、今までに見たことがなかった。わたしはだから必死で、なんとかしてルフィに笑ってもらうために頑張っている。
ルフィは一向に、泣きやむ気配をみせない。
さっきから、しきりに首をふっている、いやいやいやいや、と、駄々をこねるこどものように。いやいやいやいや、と。
わたしには何がいやなのか、ちっとも分からないから、正直ルフィを持てあましている。
ため息をつくと、それに反応したかのように、泣き声といやいやが大きくなった。
何がいやなの、どうして泣いているの、聞いてみても、うっ、あっ、と濁った嗚咽が返ってくるばかりである。
いやなんだ!
ようやく聞こえた言葉は、いやなんだ、というよりもいああんだ、といった方が正しい。
いやなんだ、なまえに嫌われるのが、いやだ!
目の前が真っ暗になった。
今度は、わたしが泣き叫ぶ番らしい。
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代償
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