いやだいやだいやだ、とじだんだを踏んで、顔面を、なみだとはなみずでじゅるじゅるにして、ようやく、マルコが、折れた。


「いいか、泡風呂だぞ、あわぶろ!」
「うんっ!」


そうしてあたしはがぜん調子よく、嬉々としてバスソーダを放り込んでお湯をはったのだ。今日、あたしははじめて、マルコとお風呂にはいる。








「へへへへ」
「……なんだよい」
「べつにー」



マルコの部屋にあるお風呂には、ちいさな窓がついている。
そこから、ぽかんときのぬけた、お昼のひざしが注ぎこんで、まあるい光を落としている。
マルコは、すっかり力がぬけてしまっているようだ。



「ねっねっマルコ!」
「なんだよい」
「このあひる、マルコに似ているでしょう」
「………」



最近たちよった街、で、買ったものだった。
このあひると目があったしゅんかん、そばにはエースがいたのだけれど、「運命よ!」と叫んでエースと手をつないで踊ったことを覚えている。
エースはなにがなんだか分かっていない様子だったけれどあたしの運命ダンスにつきあってくれた。もつべきものは、理解のある隊長である。



「あたし、夢だったんだあ」
「……」
「こうやって、むかいあわせで、マルコの部屋の、お風呂に入るの」
「……」
「へへ、涙でてきちゃった」






「マルコ」
「…なんだよい」
「くっついてもいい?」
「だめだ」
「だめだめ、へへへ、今はあたしのが有利だもの」



マルコのせいしも聞かず、首にうでをまわしてぴたり、と、密着してやった。
無防備にさらけだされたくびすじをみて、今ならマルコを殺してやれると思った。



「ねえマルコ」
「……」
「あたしねえ、マルコの困った顔が、一番、すき」




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きのぬけた風船

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