((現パロ))



土曜日、雨が降っていそうな空の下、不破に電話をした。会いたくなってしまったのだ。
数回のコールの後、もしもし、と聞こえて、むずむずと全身がかゆくなってしまった。私の纏う空気が、ピンクとか、そういう風になった。イメージの問題です。
今から会いにいっても良い?と聞くと不破はうん、と、抑揚のない返事をした。そうして電話を切った。不破のうん、が、頭に響いてぐらぐら揺れた。




うん、うん、うん、
そう言っている不破の顔が手に取るようにわかる。
うん、うん、うん、
私はいつだって、不破を捕まえるのに必死だった。
うん、うん、うん、うんうんうんうん、うん


いつか、不破が話してくれた。僕、実はドライアイなんだ。
ぴったりだ、と思った。ドライアイって、どんなものかよく知らないけれど、不破にとっても似合っている気がした。
ドライアイの不破は、だから制服の胸ポケットにいつも目薬入れている。
授業中、休憩時間、昼食時、不破は何気なくそれをとりだして、私はいつだってそれに嫉妬するのだ。
それに制服の胸ポケットは、左側にある。誰かの陰謀かと思ったくらいだ。


不破はいつだって、ドライアイなんだ。
何処にいても、誰といても、ずっと。




ふ、と空を見上げれば、さっきよりも確実に厚みを増した雲が見えた。
私は大失敗をしてしまった。傘を持ってくるのを忘れた。
この様子じゃあ、不破に傘を借りるしかない…これは運が良かったときの話で、悪ければ不破の元に辿り着くまでにびしょぬれだ。
ぬれぞうきんのような惨めな姿で不破の前に現れれば、不破の顔が少しは歪むかもしれない。
けれど、私は不破の顔を歪ませるのは得意でも、無防備にさせることはできなくて、ますます惨めになってしまうのだ。きっと。


不破は、いつだってそう。
今日も、玄関の前に出て、私の到着を待っていた。


「遅かったね、どうしたの?」
「…遅かった?」
「ん、雨が降るかもしれない、と思って、迎えに行こうかなーって思って、でも入れ違いになったら駄目だし、でも…」








目の前には、ふにゃふにゃと表情を貼り付ける不破がいる。
不破の瞳には、無力感に浸食された自分のくすんだ顔が、映っていた。






******

たったひとつ欲しいもの

((不破がタマネギなら、簡単だったかもしれない))

10/0316

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