月が真っ青で不健康な夜、小平太は、あたしの腰から腕をはずさない。
夜風がずるりと2人をなでて、二の腕には気持ちの悪い鳥肌が立っているだろう。
お風呂上がりで湿っていたはずのあたしの髪は、とうに乾いて仕舞った。ばらばらと、小平太の顔をなぜる。


「湯冷めしてしまうな」
「…とうに、冷めているよ」
「そっか…ごめんな」


後ろの塊が不気味で、振り向けず、振り解けず、あたしたちは何時間も、ここに立ちつくしている。
何となく、4年生の平くんを思い出した。彼が、こんな小平太を見たら、どんな顔をするだろうか。
それとも、


「いけいけどんどーん」
「……なんだ?」
「あなたの口癖だよん」
「ああ、知っているよ」


そういえばこの間、
長次と小平太の部屋で、「小平太はわきから生まれたの?」という馬鹿げた質問をした。
小平太はわけもわからず笑っていたけれど、長次のことだ、彼はあたしの意図を汲んでいるに違いない。


「なあ、なまえ、」
「なあに?」
「私、怖い」


ねえ長次、小平太もとうとう、ただの子供だよ。


「なまえ、ずっとここにいてよ」




******

かみさまに愛されたひと

10/0306

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -