ルフィと一緒に、食堂を探している。
俺は島に降りればもっぱら食料を吟味して調達する役回りなのだが、この島の小さな市場は、それにたったの1時間も必要としなかった。
それにしてもこの時間までこいつがどこにも入らずにいることは珍しい、どうやらこの猿にも好みというものがあるらしい。


「あ、」



しかしそう漏らして入っていった建物は、およそレストラン、食堂といった風情ではなくいっそ…やめておこう飯がまずくなる。
ルフィは持ち前の鼻と、申し訳程度に出ていた看板(魚の前に、ナイフとフォークが交わったものが描かれている)で判別、したようだ。



日当たりの良い窓際から、ルフィが俺を伺っている。

は や く こ い よ







カランカラン



ベルがなり俺の来店を告げる。店主と思われる女がルフィの方から視線をはずし「いらっしゃい」と声をあげた。

店内は想像していたよりも清潔だ。なんとか気分を良くし、ルフィの向かいに座った。


「サンジだ、姉ちゃん、サンジは俺の仲間なんだ」
「そう…、何にするの」
「とりあえず美味いもん!全部!」
「かしこまりました、サンジさんは?」
「え、あ、…エビピラフ、あるかな、」
「かしこまりました」


それっきり、女は奥に消えた。

店内には俺とルフィの他に一人、カウンターの隅で何かを組み立てている男がいるだけだった。
そこははるかに闇が濃い。闇の中から金属のふれあうカチリカチリという音が聞こえていた。


「珍しいな」
「ん?」
「静かだ、お前が」
「そうか?」
「ん」
「サンジも」
「あ?」
「くねくね、しねえのな」
「……」
「くねくね」
「…ああ」



窓の外で、土埃が舞った。たばこは控えることにした。



「おまたせしました」
「おー、いっただっきまーす」
「…どうも」


俺が注文したのはエビピラフだけだったが、女はルフィの為に店内を行ったり来たりしていた。


「なあルフィ」
「ん?」
「あの女、どう見た」
「ほう?ほうっへ…」
「口のもん全部飲み込め」
「……寒い色した女だな、って」
「…寒い、色ねえ…」
「おー」


エビピラフは、確かに美味かった。



「ぶへー、ごちそうさん」
「ありがとうございました…、」
「あ、俺が払うんで」
「……はい、確かに」


ありがとうございました、その言葉を背に、店を出た。金属の音は、もう聞こえない。


エビピラフは、確かに美味かった。ここに鶏肉があれば、俺はきっと厨房を借り、ローストしたものを女に食わせているだろう。
湯気のたったそれを食べれば、いくらか女の頬も色を呈するに違いない。



「サンジー、行くぞー」


砂埃の向こうにルフィが立っている。
あいつがあの店を選んだ理由が、ようやく分かった。


******

寒い色の女

((結局のところ俺は、寒い色をした女を、見たことがなかった))

10/0302
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