わ た し は 気づいていたよ、望ちゃんがどこかにいっちゃうことを。
手の届かない人だけど、わたしのところにわざわざ降りてきてくれたから、気づいていたよ。
気づいていたのに。ねえ妲己ちゃんお願い、望ちゃんを連れていかないで。
星降る満天の空をみて望ちゃんは泣いていた。
仙界大戦のあとでたくさん封神されて。
華奢なせなかに重くて目映いものを背負って、はち切れそうなのに。
「どうして、わたしにわけてくれないの?」
「…おぬしもはち切れそうであろうに」
やさしいのう、と。
「バカじゃないの」
せなかのものはきっといつか降りてありがとうとキスをするよ。
けれどもそのときあなたは、ここで笑っていてくれないんでしょ。
どこかからこの光景をぼんやり眺めてるんでしょ。
せなかの寒さは、軽さは、あなたをひどく悄げさせるんじゃないの。
「いやよそんなの」
ぎう、とせなかに抱きつくと望ちゃんは初めてこっちを向いて「あったかいのう」と言ったので
「そうよわたしはあったかいよいつでも望ちゃんをあっためられるよ肩も揉むしせなかをながしてもあげるよ」
と捲し立てたのだけれど
気づいていたよ、あなたが深い目をしていたことを。
でもどうせ、どこかにいっちゃうことを。
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たったひとつ、キスを落として
((あんまりじゃない))
09/1003