((現パロ))



なまえはテレビ画面から目を離さない。


世間から見放されて久しい、年季の入ったゲームのコントローラを持ち、右手の親指はAボタンとBボタンをいったりきたりしている。
テレビ画面の中にいる勇者が剣を振り回す、と、およそ生物とは思えないモンスターが音とともに消えた。




キュウン


不意に画面が暗くなり勇者の動きが止まった。確かこれはアイテム画面といって、Yボタンにセットする武器を切り替える為の「滝、」「…おう」
なまえはよくポーズにこれを使う。私が来てもう10分も経とうとしているがようやく、私の目を見た。





「来てたんだあ」
「10分前にな」
「…そっか」
「もう5時だぞ」
「そっか」





くわあっ、となまえが伸びた。
肩や首がパキパキと音を立てる。


目を、悪くするぞ、という忠告が、効かないのはもう分かっているがついつい口をついて出てくる。
なまえは目をしょぼつかせて、くしゃりと笑った。


へへへ、


眉毛がしゅんと下がっている。



「前髪も、こんなに伸びて」
「そうだねえ…」
「見えにくく、ないのか?」
「タカ丸さん、今日も来てるの?」
「ああ、喜八郎も三木ヱ門も」
「……そっか」


へへへ、


「…綾ちゃんは、元気?」
「相変わらずだ」
「メールをね、くれるの。休憩時間、とかに」
「ああ、熱心にカチカチしているな」
「三木も、たまにくれるのよ、綾ちゃんみたいに、シュールな事は書いてないけど」
「そうか」
「前髪も、こんなになっちゃった」
「……」
「みんな、怒ってない?」
「…どうして?」
「……」






閉め切られたカーテンから、夕焼けのオレンジが漏れている。




「…ごめんねって、言ってるって、伝えてね」
「…なまえ、」



キュイン









ポーズが終わり、勇者はまた敵を蹴散らす。たった一人のお姫様を救うため、およそ生物とは思えないモンスターに、勇敢に立ち向かうのだ。


なまえの丸まった背中に、また明日と声をかけ部屋を出た。彼女からの返答は、ない。




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アンモナイトの願いごと

10/0206

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