((現パロ))
教室があかるい。
これは逆説的で、そとが暗いから、あかるい。蛍光灯の光が目にしみる。
そとでは、静かな雨がふっている。
「あはははっ」
女の子の華やかな笑い声がきこえた。MP3のボリュームを上げた。
静かな雨がふっている。
傘は、黄緑いろ。街にキリリと映えるいろ。
「この不等式の表す領域は……」
xにもyにも、本当はなんの興味もない。
けれど学校にまいにちまいにち、通っている。
今日みたいな静かな雨の日は、ことに目がくもる。
「斉藤、前で解け」
となりの席で寝ていた男の子があてられた。
太宰治のきりぎりすを読んで昼休みを過ごしていたら、どうしようもなく泣きたくなった。
化学の時間、ついついうとうとしてしまって、夢をみた。
私はゴミ袋に入れられて、捨てられてしまっている。
ゴミ収集車がきて、あああこれで大丈夫、と思ったのに、お兄さんたちは持って行ってくれなかった。
あのぐるぐる回る機械を、後ろ姿をみつめて、目が覚めた。
チョコレートを一かけ口に入れて、最後の授業、英語に備える。
でも文法は、つまらない。
難しいから。
SHRの後、掃除をすませてそとに出た。
雨は、まだ降っていた。
パンっと傘をひらいて、中に入って、ぐしょぐしょの道を歩く。
「なまえ、」
景色が、爆発した。
雨が、やんだみたいだ。
「雨、降ってたから、傘もってきたんだけどね」
「……」
「でも、ちゃんと持ってきてたのね」
「うん、」
「そっか、偉いなー」
「……」
「俺ったら、甘く見てたねなまえを」
「……んんん」
「……」
「…ねえ、クザン」
「ん?」
「今日、は、何してた?」
「しごと、しごとに決まってんじゃん」
「えー」
「なまえちゃんは?」
「ん、私はね、」
泣いてた
「ずっと」
「………」
「雨、降ってたでしょ、あれはね、私の、涙」
「……」
「へへ、詩人でしょ」
「……ポエマーなまえ」
「へへへ、」
くしゃり、大きなクザンの手が私に落ちた。
「おかえり、寒かったろう」
「……ん」
あかね色の空から、また雨が落ちる。
家に帰ればクザンがいる、その信頼が、なんとか今の私を造る。
******
どこでもない場所へ
09/1221