「なんだよ、それ」
わからなかった、なまえがどうしてそんなこと言うのか。
寂しくなっていく頬と、それは関係のないことのように思えた。
エース、
そう言って、俺の腹に唇を這わすなまえが好きだった。
そのまま髪を撫でて、ぐしゃぐしゃにして、そうすればなまえがもっと下にいくのを知っていた。
頼れるほどの厚みはないけれど、なまえの胸は良い匂いがした。
手に取るように蘇る、なまえが、目の前にいる、なまえと、違うように見えて
「いやだ、」
視界が歪んで、鼻の奥がツンとした。ルフィを思い出した。今俺は、あいつみたいに、顔をぐしゃぐしゃにして、鼻水を流しているかもしれない。
そんな俺を見て、頭を撫でるなまえが浮かんだ。そうしてこう言うんだ、「そうね、ごめんね」
けれど、歪んだ先に見えたなまえは、窓の外から視線をはずさなかった。ぐしぐしと鳴る俺の鼻も一向に介さなかった。
すると急に、声を出したくなった、いやだいやだいやだ、ルフィの真似をした。いやだいやだいやだ
「いやだいやだいやだいやだ、」
なまえは、こっちを向かない。
あわてた俺は、直ぐにベッドの端により、なまえを抱きしめた。
少し冷たくなっていた首筋にひたすら鼻水をこすりつけて、いやだいやだ、とわめいた。
いやだいやだいやだいやだ
いくらかたって、気づいたことがあった。
なまえの肩は細くて、腕なんて折れてしまいそうだということ。
起き抜けの顔は少しかさついて、目も一回り小さくまゆ毛も薄い。
髪のつやもいつもより少ない、唇もどこかくすんでる、絡めた手も、今じゃ
今じゃ、
「エース、」
けれど
「もう来ないでね」
目だけはいつもよりもうんと深くてうんと澄んでいてうんと、
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沈んだ瞳に見出した、
09/1122
愛の言葉は響かない、の続きでござる^^^◎