妲己ちゃんとわたくしは、とても奇妙な仲と噂されておりました。

妲己ちゃんは金鰲島の妖怪仙人、わたくしは崑崙山の仙人。
馴れ合いなど、見られないのが当然の仲、それでもわたくしは城へと足繁く通ったものでした。
妲己ちゃんの元へ。


「あらーんなまえちゃん、お久しぶりん」
「妲己ちゃん、お元気そうで何よりです」


わたくしたちの間には、ようやく会話が成り立つ程度で他にはなにもありません。
一通り挨拶を交わし、それからずっと空を眺めていたこともありました。
妲己ちゃんは、わたくしが何処にいようと何をしようと、気にも留めていないようでした。
わたくしもまた、妲己ちゃんを一目見れば、満足してしまうところがありました。



わたくしたちの間には、なにも割り込めませんでした。信頼も、シリアスも。

ただただ愉快だけが、そこに横たわるばかり。







そういえば一度だけ、妲己ちゃんと杯を交わしたことがありました。


「毒なんか入れてないわよん」
「……どういう風の吹き回しですか?」
「さぁねん」


様子はいつもとなんら違わず、優雅でゴージャスでございました。
大きな丸い月の出る、美しい夜でした。



「封神計画を、ご存知ん?」
「……封神計画?」
「そうん、きっとなまえちゃんも参加することになると思うわん」
「………どうでしょう、わたくしは」

ちょっと敬遠されておりますから、と続けて気づきました、妲己ちゃんはわたくしの言葉など何一つ聞いておりません。

ただ杯に映る月を、それはそれは慈しんでおりました。



「やっと、よ」



予感めいた寒気がわたくしをおそいました、むしろ確信といっていいかもしれません。
この美しい人を、その晩ずっと眺めておりました。彼女はずっと、慈しんでおりました。
















「わらわは太母となってずっとあなたを見守ってあげるん」


目映い光があたりを包み、笑って妲己ちゃんは、消えました。



忘れないわん



妲己ちゃんはそう、忘れないでしょう。わたくしとの思い出も、紂王とのそれも、太公望のも、どんな温度も質も違わず。






あの晩からわたくしの心には、細波すら立ちません。


妲己ちゃんという、美しい人は、わたくしの母君であります。









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グレートマザー


09/1009

妲己ちゃんに憧れて\(^o^)/

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