のどがかわいた。
ぐだぐだそう感じているうちに、ゆっくりと目が冴えてくる。
さっきまでちっとも思いどおりに動かなかった体も、水分を求めて血の気が戻ってきた。
ペタン、と床に足を置く。ねむりが浅い大男を起こさないよう、素足で冷蔵庫まであるく。
ドアに手を伸ばしかけた途端、掴まれる腕。
「……どこ行くの。」
「、起こしちゃった?」
いつもよりあたたかい手の温度に振り返ると、クザンが眉をひそめて立っていた。
「水、飲みに行こうと思って。」
ペタペタと歩き出す、掴まれている腕はまだ放されない。
「……俺、腹減っちゃった。」
「クロワッサンなら、あったと思うけど。」
「あー、うん。食べる。」
「じゃあ紅茶入れよっかなー。」
クロワッサンをオーブンで温め、二人分の紅茶を作る。
いつもより緩慢な私の動きを、クザンはソファでじっと見ていた。
「はい、どうぞ。」
「……いただきます。」
時刻は午前2時37分、未だ真っ暗な窓の外。
中途半端に覚醒した体。
いつもより紅茶が体に染みいる感覚。
「クザンって、ゆるい服似合わないよね。」
「何よ、突然。」
「や、ジャージとか短パンとか、普通の部屋着似合わないなーと思って。」
実際クザンは素肌にガウンを羽織っている。一方私は変な柄の(少し前にクザンが買ってきた)パジャマだ。
「ほら、フォーマルな男ですから。」
「なかみカジュアルなくせしてよく言うよ。」
「おっ、うまいね。」
「……別に全然うまくないと思う。」
「何いってんの、クロワッサンの話。」
「あーはいはい。」
それから私たちはしばらく黙り、紅茶とクロワッサンを食べ終えた。
時刻は午前2時52分、まだ存分に早い時間なので私たちは寝室に引き上げた。
ベッドに入り、ペタリと体をくっつける。
「珍しいじゃないの、自分からくっつきに来るなんて。」
「んー、なんとなく。」
さっきの紅茶が美味しかったから、と言うと「なるほどね」と返ってくるクザンの声。
「おやすみ、クザン。」
「ん、あぁおやすみ。」
ベッドの中は、幸福で満ちていた。
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丑三つ時の軽食
((朝ちゃんと起きられるかな))
09/0822