千切れた迷子縄
初めて自分が富松作兵衛じゃないと気付いたのは、小学生になって、かつての仲間と出会った時。
小学校の入学式、僕たち五人は前世の記憶を思い出した。
でも、あれ、おかしいな。
神崎左門として一生を終えて平成の世に生まれ変わった僕は、何故か作兵衛になっていた。
昔っから僕は方向音痴だったけど、どうやら生まれる場所まで迷子になってしまったらしい。
「おーい、作兵衛!また迷子か?」
「迷子一人でも大変だったけど、作兵衛まで迷子になるなんてなぁ」
「まあ、作兵衛が迷子になっても、仕方がないから僕が探してやるさ」
「僕だって、昔、作兵衛に助けられてばっかりだったもの!今度は僕が作兵衛を助けるんだ」
違う、作兵衛は迷子じゃないよ。
三之助、孫兵、藤内、数馬、みんな神崎左門を、覚えてないのか?
作兵衛が迷子になるはずがないんだ、僕が居場所を奪っちゃったから、いけないんだ。
作兵衛、やっぱり僕も三之助も作兵衛がいなきゃダメだったよ、いつまでたっても迷子のままなんだ。
作兵衛の居場所を奪ってごめん、何度だって謝るから、これがきっと最後だから、早く僕を探しにきて、作兵衛。
じわりと視界が滲む。えーん、えーん、小さな子供のように泣きじゃくって、だけど誰も僕に気付かない。
拭っても拭っても涙が止まらなくて、僕はいつからこんなに泣き虫になっちゃったんだろう。
『一緒に生きていくことが出来ないのなら、せめて僕と作兵衛、融けて混じりあって、ひとつになれたらいいのに。』
こんな形で叶えてほしくなかったよ、作兵衛。
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