偽りの「美女と野獣」


作法委員会に所属する者たちは、まるで華のようであると彼らをよく知る生徒たちは言う。
美しく咲きながら、しかし容易く手折られぬようにと、むしろ相手の命を奪わんとするがごとく鋭い棘をその身に隠し持つ華であると。
作法委員会委員長である立花仙蔵は、まさにその筆頭であった。

対して生物委員会委員長代理である竹谷八左ヱ門は、体育委員長の七松小平太と並び、狼のようだというのが生徒たち、いや、教師を含めた学園関係者の共通認識である。
明るく快活で良くも悪くもまっすぐな性格、それでいて敵と認識した者には容赦なくその鋭い牙で喰らいつくその様は、肉食獣以外の何でもないと誰もが思っていたし、事実七松小平太に関しては間違ってなどいなかった。

しかし。

「ねぇ先輩、俺、先輩を一等…一等愛してます。『一度飼った生き物は最後まで責任をもって面倒を見る』、一度手懐けちゃったら最後まで面倒を見なくちゃなんです。…だから、先輩も俺を愛してください、ずぅっと傍にいてくださいね?離れるなんて言わないでくださいよ、そんなこと言われたら、俺、先輩が逃げないように足を切らなくちゃ。それともそんなことになる前に首輪を着けた方がいいですか?赤か、黒か…きっとどちらも先輩の白い肌によく映えると思います、どちらがいいでしょうか、やはり血のように赤い首輪にしましょうか。ねぇ、先輩?」

実際の所、竹谷は狼ではなく毒虫のようであった。
絡めとり、気付かれないように少しずつ毒を侵食させていく。
捕らわれたらそれが最後、棘を持つ華ですら、毒に侵されてしまえば染まるだけ。
解毒剤は存在しない、何故ならその毒は自覚症状の無いままに全身を蝕むから、周囲の人間も本人でさえも、毒の存在に気付かないから。

そして、




「竹谷、私もお前を好いているよ」

棘のかわりにほろりと吐き出された言葉に、彼はまるで太陽のような笑顔を浮かべた。



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