逃げ道




「トールさん!」

「…………」

「だから!なんで逃げるんだよ!」


俺が追いかけているのはなんか多分俺よりも強くて怖そうな見た目の人
俺も大概泣かれるけども。酷いときは泣く子も黙るっていうあの例えを使われるけども
実際はそんなことないと思いたい、いやそんなことはないはずだ


「……悪いが、おれは蛇は……」

「俺蛇じゃねぇって!雨は降らせるけど!龍だけど!蛇っぽいけども!蛇はあっちだから!」

「……?呼んだ?」

「……っ」



玄武に乗って優雅に登校しているアホな俺の幼馴染の一人小柚希(コユキ)を指させば、トールさんは颯爽と逃げた

どんだけ蛇嫌いなんだあの人
そんなことを思いながら、枷の力を無視して神化していた状態から人間へと戻る

ルール?校則?そんなもん……


「破るためにある!!」

「わ……びっくりした」

「はっはっはっは!っしゃ!追いかけるか!じゃあなこゆ!」

「え、あ、うん……みーちゃん待ってようかな」


ちなみに、みーちゃんと呼ばれた奴は朱雀の美月(ミヅキ)だ
もう一人百虎の麗菜(レナ)もいるけども。まぁ、それはまた今度でもいいとしよう


「トールさーん!待ってくれって!」


ガッと加速して、なんとか腕を掴んで止める
何この人足速過ぎだから。まぁ、そんなところも男の俺から見てもカッコイイと思うけど



「ほら!これならいいだろ!」

「……あぁ。すまない」


人間の姿の俺を確認して、トールさんは謝ってくる
正直に言うとこの追いかけっこが楽しくて毎朝毎朝、わざわざ神化した状態で登校しているとは言えない



「今日も草薙ちゃんが頑張るんだろうなー」

「……あぁ。そうだろうな」

「俺もちったぁやんねぇと卒業させてもらえねぇな!ただでさえあだ名が留年生なんだしな!」

「……頑張れ」


(謎の孤独から逃げる術は貴方を想うこと)








×