バレンタインなので




「……何、マジで渡すの?」

「え、うん」

「みづ、勇者なの?」

「いや、普通だろ」


教室の前で、ひとまずチョコの入った紙袋を片手に硬直しています。満田麗菜ですい。
もうそんな、あぁ、無理、吐きそう。

練習で作った生チョコは食しましたが、これは本番なので渡すようです。
マイエンジェルに。マイエンジェルに。マイエンジェルに。


「そいうところだけ、女子だよな満田」

「みづ何を……ってうぇい!」


俺が一人で謎の羞恥と格闘しているのを横目にしれっと入っていって、タナトスくん、いえ、タナトス様に押し付けのように渡している美月様。
なんですか畜生め。
廊下から監視してるだけですけど、何か。


「……ミーちゃん、レーちゃん、いないの」

「あ、いやいるよーそこにー」

「ひぃいいいい!」


名前を言われ思わず声が出る、何あっさり言ってくれとんじゃこのアマァ!


「……おはようなの」

「お、おは、よう!」

「レーちゃん……どうかしたの?」

「い、いえとんでもござーません!そ、そのだね!」


慌ててチョコの入った紙袋を背後に隠して、ヘラヘラしておく
嫌だよ、なんでこんな視線の集まる中渡さなきゃいけねーのよ。
私がテンパるから視線が集まったんですよね知ってます!!


「……レーちゃん……?」

「はぅあ……マイエンジェルキタコレ……っ!」


キョトンとしたような表情にあっさりと打ち抜かれ、ヘンタイ全開になったから、あきらめて、チョコを差し出した
もういいや、なんかもうマイエンジェルとか言っちゃったしムードもへったくれもないという。


「……ヒュプノスにくれるの?」

「そうだよぉ〜マイエンジェルのためならどんなことでも……っ!」

「レーちゃん、ありがとうなの」

「(やばい飛び降りる)」


「わ"−!満田ー!声に出てるし、ガチで飛び降りようとするなー!」

「離せみづー!!!!俺はもう運を使い果たしたんだぁああああ……マイエンジェルかわいいよぉおお……」






「……姉ちゃん、グル兄に似てきたな」

「それで、れーじたぁん」

「ない」

「いけずぅ」

「あるけどない」

「ちょーだぁい?ないならぁ、れーじたんを食べちゃうよぉ?

「あるから寄るな」

「れーじたんも大概ムード壊すよねぇ」







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