雨の中に佇んで



(卒業後の話※番外編なので本編のエンドとは関係はありません)


「…誕生日に雨かお前」


卒業式も無事に終わって、俺はといえば放課後に下駄箱から雨の降る空を見上げていた
今日は3月20日であいつの誕生日だ
もちろん一応風神である俺がこっちに戻ってきてしまった以上は直接祝うことも出来ないわけだが


「…。神話、か…。興味ねぇ。まぁ他人事じゃねぇんだろうけど」


俺がなってしまった風神だって本来は神話のひとつにすぎない
その本人が随分あっさりした意見を述べてしまっているわけだがまぁ仕方ない俺だから

こんなことを考えながらも、雨の降るなか、傘も差さずに歩いて帰ることにした


(結局戻って来ても、何も変わることはねぇんだけどな。神様か…デュオニュソスみてーに俺も神様廃業しちゃおっかなーとか言ってみたりして。まぁ、実際なんも活動してるわけじゃねぇし)


雨の中、ずぶ濡れになりながら向かう先はいつもの、あのきっかけにもなった海だった
今日は雨は降っているけど生憎風はやんでいる
俺にかかれば強風、いや暴風クラスにすることも可能だけど、まぁ、仮にもここは人間の住む場所なわけで

いや、俺も人間だったわけだけど


「……こんな砂利だらけじゃまともな貝殻も落ちてねぇだろうな」


俺はあいつが好きだった貝殻を砂利の中から探しながら、静かに雨に打たれている海を見つめていた




(雨の中にただ佇んで、記憶だけを辿る3月20日)




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