ちょっとそこの人




「……はぁ」

「どうかされたんですか?」

「いや、なんでも……」


あれから一日がたった
俺はよく考えればあいつの誕生日を忘れていた
昨日に限って俺は面倒くささから学園をサボっていた

そして今日の朝、顔を見て思い出した。あぁ、あのおニイさんの誕生日だったなと


(……何も思いつかん……)


誕生日に男が男に何をやればいいというのか
女子ならまぁそこらのでいいんだろうが。といっても、一日過ぎてしまっているわけで

おニイさんのことだから、嫌がりそうだ
なんというか、俺の苦手なタイプだから
癖のように言っている、『醜い子』という言葉。捨てられたからといってそこまで言う必要があるんだろうか


「……。よし」


ゆっくり席を立ち上がって、目的の人物を探す
教室にはいないということは海かそれとも尊をからかいに屋上に行ったかのどっちかだろう

とりあえず最初は屋上に行くことからだな


一歩一歩階段を上がっていきながら、まだ纏まってはいない思考を回転させる
言いたいことは山のようにあるが、どれから言えばいいのかイマイチ考えがまとまらない


「……いた」


屋上で珍しく寝てるんだろうか。尊もいるがあいつは確実に寝てる。
あの雰囲気からしてきっとおニイさんも寝てるんだろう


「……。世の中さ、生まれてこなきゃよかった人間なんて、いねぇと思うんだよ。……俺、キライじゃねぇよ、どんなアンタでも。醜くかろうが捨て子だろうが、関係ねぇと思うよ。……もっと、自分のこと信じろよな仮面野郎。……あー、俺何独り言言ってんだ…やめたやめた!帰るか」


腰に巻いていたジャケットをそっと寝ている馬鹿二人にかけて、来た道を戻ることにした


(伝わればいいのに。伝染すればいいのに。醜いなんて自分で言える人は、本当は醜くなんかないのに。生きているだけで奇跡だということを神様連中は考えたこともないんだろうか)


(……関係、ナイねぇ。寝たふりしといて正解だったかな〜)







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