運任せとイカサマ




「「……」」

「……冷慈、トランプとかできたっけ……」

「宋壬うるせぇ!!やってみねぇとわかんねぇだろ!ひとまず無い頭にルールは叩き込んだわ!」


放課後に繰り広げられているのは俺とおニイさんのトランプ勝負
事の発端はいつもどおりで、おニイさんの挑発に俺が乗っかっただけなんだが。
問題はトランプだ。そうトランプ
俺はこの類で勝ったことが無い。それすなわち……賭け事に弱い。それも非常に。
頭を使うゲームとやらはまったく持ってお手上げだ


「あ、ちなみに僕は運がいい方なんだけどハンデいる〜?」

「はっ、お気遣いどーも。いらねぇよ、んなもん」


本当にいらないかはさておき、ここでハンデなんかを受取るとそれはフェアではない。
実力行使でいこうじゃねぇのよ
その実力がないからいつも負けてるんだろうけども


「ん〜それじゃあ、ポーカーっていうのがいいなぁ」

「……ババ抜きじゃなくて、よりによって、それ……」

「"俺が絶対に勝てないやつじゃん"って感じぃ?」


俺の真似をしながら言う辺り、コイツふざけてる。
それが妙に似てると自分でも思うのがまたふざけてる。


「けっ、やってやろうじゃねぇのよ」

「そうこなくっちゃねぇ」



「おぉ!!冷慈がロイヤルストレートフラッシュとか!ちょ、哀詞!」

「……馬鹿でも引き当てるもんだな」

「おい双子、そこに直れ」


ただし、精一杯柊さんの真似をして揃えたイカサマでのロイヤルストレートフラッシュ。
当然、ぶっつけ本番見よう見まねでしたイカサマじゃ、スペードのロイヤルストレートフラッシュで限界だ


「あれ〜おかしいなぁ。君、イカサマしちゃだめだよ〜。ズルしちゃう悪い子にはオシオキしちゃおっかなぁ」


ヘラヘラとしておニイさんが出したのは"ハートのロイヤルストレートフラッシュ"


「チッ!!」

「どこに隠してたのかなぁ。そのスペードのAはさ」


イカサマもバレているらしく、はいはい、お手上げですよ。といわんばかりに降参のポーズをすれば即座に腰を引かれて、至近距離まで顔が近づいた
顔?いや、仮面と近づいたのか。うわ、そう思うとトキメキもしない


「いやいや、なんですかね。キモイわ離れようかおニイさん」

「ん〜?オシオキって言ったじゃ〜ん」

「こっから仮面ごと削ぎ落とすぞ」

「やれるもんならやってみなよ、おチビちゃん2号機のくせにぃ〜」


あぁ本当に嫌になる距離の近さだ


(まじでキスする5秒前ってか。いやいや、ねぇわ)







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