運命と定め 「また、ここか」 グルーガンからは見えない位置、そこからモリガンはそっとその薄づきの金髪の長身を眺める 「……哀れな男だ。愛した者を信じもせずに手にかけるとは」 自分もかわらないのかもしれないがと、思いつつも草木に覆われたそのピアノを奏でるグルーガンをただ、見つめるだけ 何故か肩耳にだけついたそのピアスの理由は何度聞いてもはぐらかされて終わってしまう まるで聞いてはいけないパンドラの箱のように、今日もまた、木漏れ日の光を綺麗に反射させながら揺れていた 「……どうして出てこないの?モリガン」 ピアノの音がやんだと思ったら、グルーガンはどこか複雑そうな表情でそう呟いた 「……気付いていたのか」 「当然だよ。かわいい女の子の気配がしたからね」 「変態め、この場で二度と口が聞けぬようにしてやる」 「あぁ、それも、いいかもしれないね」 「?」 「俺の言葉は、影響力がありすぎて、何もかもをダメにしてしまうから」 近づいたモリガンを引き寄せ、今だけ、と彼女の肩に自分の頭を預けるその姿は酷く弱弱しく、これが人間のフリをしているグルーガン・ルレットとしてではなく、平和の神、フォルセティという本来の姿なのだと分かる とある悲劇を引鉄に、彼が懺悔を毎日していることを、モリガンは知っていた 明るく優しい、変態接着剤と呼ばれるような存在とは真逆のその存在の心の根は 痛みに耐え後悔と犯した罪に縛られたままだった それを象徴するように、左耳につけられたピアスが綺麗に輝いている 「……。お前も、私と変わらないな」 「……そうかな。そうかもしれないね。ねぇ、モリガン」 (君は俺の言葉を鵜呑みにして壊れないで、バルドルの傍で愛の素晴らしさを知ってほしい) (君が白、バルドルが金、俺が黒。そうして俺はまた、フォルセティという名を理由に、自分が白だと偽る) (そうすれば、君とバルドルが俺の行く道を照らしてくれるんじゃないかと思うから) ×
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