福笑




俺の恋人はいつも無口で無愛想。でもいるだけで心強い存在なのは確かだし
態度だけであぁ愛されてるな。なんてことも思う


(思うけどもね……)


最初ですら俺から告白しただけで、一回くらいこう、好きって一言くらいあったってさぁと思うわけで、でもそんなことを思う自分が女々しくて余計嫌になる

という悪循環の繰り返し


「……あぁああああもう!!俺キモイ!!」


どこぞの乙女思考のような俺を見たら麗菜なんか吐きそうだ。
俺も今の自分を見て吐きそうだ。
こんな奴じゃなかったのになぁ。色んな女の子と遊んで、いわゆる一夜限りの恋なんてしてみたり、それなりにモテたり


(こんな見た目だけどな……それなりに男だったのにな……)


なんだ、この様は。


「ああああああああああ!!!!!男らしくねぇえええ!!すんません綾さんあああ!!」

「ルア!うるさい!!」

「ぎゃ!!な、なんで麗菜がいんだよ!?」

「うっせぇわ!こっちゃトールちんの頼みで呼びに来ただけだ!!誰が好き好んでバカップルのために動くもんか!……しねぇっ!」

「死なん!!」

「しねぇ!!」


思わずリメレのボーカルさんに謝ってしまった
くそう、男らしくあるべきはずなのに、なんたる不覚……

そう思いながら、トールさんの待ってる場所までブツブツ女々しくない女々しくないとか言いながら、歩いて行った



「……ル、ルア……?」

「うお!危うく通り過ぎるとこだったぜ!」

「……いや、もう3mぐらいは通り越してると思うが……」


的確なツッコミをいただいたところで、とりあえず自分の女々しさのことは一旦忘れて、このイケメンの前に仁王立ちをしてみる
そ、そうだ、俺の方が5cmとはいえ身長だって高いし、ヤンキーだし
ヤンキーだし!!!

いや待てよ、この状況はあれか?

『おいテメー金出せよ』的な状況に見られるのか!?


「……っ、く、は、はは……」

「!?な、な!?」


俺が真剣に悩んだというのにトールさんが珍しく声に出して笑っていた



「……い、いやすまない……。あまりに表情が変わるから、つい、な」

「そ、そんなに!?」


心なしかいつもよりも優しげな笑みに何も言えなくなる

5cm差とか、ほぼ目線変わんねぇし……余計トールさんのイケメンさが視界にだな……!!


「……好きだ」

「へ!?」

「……あ、いや、言ったことがないな、と思ってな……こういうのは言わないと、不安になるものだと草薙に聞いた」

「え!?あ!?そ、そうデスカ!!」


タイムリーにその言葉を言われてしまって、別に不安とかじゃないっていう否定をすることすら忘れてテンパってしまった
俺、かっこ悪いですね!!こんな俺が女子をはべらかしてたんですね!
実は昔麗菜に手を出そうとして返り討ちになったときよりも遥かにかっこ悪いぞ!


「……」

「……っ!?」


たった一瞬、唇が重なっただけ、トールさんの顔が異常に近づいただけ
今までなら自分から女子に軽々としていた、その行為だということに気づけなかった


「!?な、あ、あ!?い、いや……ちょ、ま……!?」

「……すまない、嫌だったか?」

「ばっ、ばっかじゃ……だぁあああああああああああ!!!!!!!!」

「!?」


あまりの羞恥にその場で発狂しながら土下座でもするかのように蹲ってやった


(キスくらいで……っ!キスぐらいで!!鎮まれ俺の大黒柱ぁあああああ!!!!)





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