甘い疑惑 「なぁ冷慈さん」 「あ?」 最近尊がやたらと俺の顔を覗き込んでくる 一体どうしたもんかと俺も疑問には思ってる そんなにひどい顔でもしてんだろうか 「……あー……やっぱなんでも……」 いつもと同じで何かを言おうとして、やめた もうこのやりとりも飽きてきた 逃げるように離れていこうとした尊の手を掴んで若干キレたまま声をかける 「言えよ。俺に、言えねぇことでもあんのか?」 「……っ!?」 「へぇ、そうか知らなかったなー。俺に隠し事か〜。へ〜ぇ?」 「あ、いや、だから、その!」 こっちはキレかけているというのになんでか赤面する尊 俺はどういうリアクションをすりゃいいんだ 手、離したほうがいいのか。いや今離したら確実に逃げそうだぞコイツ 「……なんだよ?」 一呼吸して、少しだけ苛立ちを沈めてからもう一回できるだけ優しく問いかければ、そっぽを向きながら地味に話し出した 「……その……冷慈さん、こ、こ、恋人とか、いねぇのかな〜って、この間、草薙と、話……してて……」 「はぁ?」 「いや、ここでじゃねぇよ!?元いた場所っつうか……!!」 「いやいやいや、学年の嫌われ者に彼女がいたとでも思いかね、君たち」 むしろ俺みたいな奴に寄ってくる女がいたとしても罰ゲームかなんかだぞ、それ なんつー馬鹿げたことを…… だいたい、彼女がいたら俺はお前とか草薙にこんな構ってねぇよ!! と、思いつつの、ちょっとリアクションがあまりにも面白かったので、黙っておくことにした 「なんか、その……扱いに慣れてるっぽいしよ……」 「……ぶっ、は、あっはっはっはっは!!慣れてるって!そらお前、俺の周りの大人のせいだろ!!柊さんとかグル兄といりゃこうもなるわ!」 我慢できなくて盛大に吹き出してしまった 一体なんの心配がしてぇんだか。涙まででてきやがりました 笑いすぎてな 「あーもうくっそ……ほんと、可愛いな」 「!?」 「心配せんでもお前と草薙だけだよ、特別扱いなんは」 (好きとかそんな言葉は俺の口から言うには甘すぎる) ×
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