満足できない





「冷慈さーん!」

「冷慈さん」


いつもと同じ俺を呼ぶ声がする
最近、地味に自分で俺は末期かもしれん。と思うことが増えた原因でもあるようなないような


「へいへい。どうした」

「今日の放課後、3人で出かけませんか?」

「海!海行こうぜ!」

「おう、行くか。にしても元気だなぁ、お前等」


季節が夏になったこの時期に、元気が良すぎやしねぇだろうか。
俺も季節的には夏が一番好きだけど、それでも暑さに若干くたばっている
体力は。


「っしゃ!泳ぐぜ!草薙と冷慈さんも泳ぐだろ?」

「そうですね、せっかくですし」

「いや、俺は脚だけでいいわ」


はしゃぐ2人を見るほうが楽しそうだ。何より、重大な事件がある。

俺、泳げ・な・い!!
カナヅチではない。トンカチではある。


「えー、冷慈さん!泳ごうって!ぜってぇ楽しいのに!」

「え、いやいやいやいや……楽しいのは知ってるけど」

「……もしかして、冷慈さん……泳げないんですか?」

「べ、別に足さえつきゃ……!!」

「「泳げないんだ」」


グサグサと傷を抉られながらも、結局は海に行って泳ぐことになってしまった
いや、まぁ、俺得といえば俺得のような。そうじゃないような




「やーっぱいいよな!海は!」

「あーいい潮風だな……」


そんなこと言っていると、左は尊、右は草薙にしっかり腕を掴まれた

おっと、これは……俺の身の危険をひしひしと感じるのだが?


「お、お前ら離せよ……」

「さー草薙、泳ぐぞ!」

「そうですね、尊さん」

「やめろぉあああああ!!トンカチだっつってんだろうがああああ!!カナヅチ通り越してトンカチだぞ!?大体んな格好で引っ付くんじゃねぇ!!泳ぐ前に二人まとめて襲うぞ!!」

「「!?」」


(俺の身も危険。下半身も危険。詰んだな)






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