以心伝心



「おい、お前。まず作る気があるのか」


今日は第一回、俺、満田冷慈による神様どもへの料理教室の時間である。
ちなみに生徒は1人、イシスさんです。えぇ、そうです。あのおふざけたキャンディーな馬鹿野朗のコレです


『こ、これじゃダメなのか?』

「料理すんのにエプロンは必須です。よろしいか?」

『あ、あぁ。わかった』


尊と月人で分かっていたが、どうやら神様ってのは料理はしないようだ
トールとハデスはなんかするっぽいけど。

さて、問題はここからだ。料理が苦手だといえども、イシスも女子なわけで、多少くらいはー……


『!?』

「……小麦粉、真っ逆さまにひっくり返したな……?」

『は、入れば一緒なんだろ!?』

「いや、まぁ、そうだけど」


小麦粉を真っ逆さまにしたせいであたりが白く粉まみれになっていた
ひとまずそこを片付けてから、分量を量っておいてやろう


『……すまない。迷惑をかけた』

「いや、大丈夫。慣れてるから。それよかバター量っといてくれるか?俺片付けるからさ」

『わかった!量ればいいんだな!』

「そうそう、それ使ってな」


それからは順調だった。普通に混ぜて、型で抜いて、オーブンへ入れるだけの作業
昔、一回だけ塩と砂糖を間違えて、くそ塩辛くなったことがある。あれは地獄だった

そう、今作っているのは、簡単なお菓子の代表、クッキーさんだ
俺はそこまでお菓子は得意じゃねぇけど、イシスに頼まれ二つ返事で了承をしてしまった


「あとは焼けるまで待ってろ。ほれ、茶」

『あぁ……このシフォンケーキも冷慈が焼いたのか?』

「まさか。俺じゃねぇよ。それよか食え」


シフォンケーキなんて滅多に作らない。それは彩詞が作っておいて行った謎の残り物だ
まぁ、あいつが作ったんだから味はいいんだろうけど


『それにしても……やっぱり意外だな。冷慈が料理上手っていうのは』

「へーへー。よく言われますよ」

『好きなのか?』

「おう。ちっせぇときからしてたしな……」

『それなら、尊はいいオヨメサンをもらってことだな』

「なんで俺が嫁なの。おいコラ」


そう言いながらシフォンケーキをつついて口へ運ぶ
なんだか、イシスからの視線が痛いような気がするが、これで目を合わせたらなんか終わりだ
ロクなことを言わなさそうだし……


『冷慈はひとつひとつの動作がチャラいな』

「あ!?」


思わぬ発言につい、手に持っていたフォークを落とした
なんだなんだチャラいか!?


「チャラくねぇわ!!」

『チャラいぞ。なんか……カッコイイけど、なんでかチャラいというか……何も考えずに他人に手を貸せるというのは凄いことだが、尊は大変だろうな……』

「はぁ?わけわかんねーし。別にやましいことしてるわけじゃねーんだからいいだろ」


所謂、女子理論に俺はついていけなくなりだし、ため息をついて立ち上がる
そろそろ焼けるから台所にでも戻っとくか


『お前は好きって言ったりしないのか?』

「なんだよいきなり……」

『ロキはいつも言うぞ』

「へいへい、ごちそうさん」


日本男児は言いませんけど。不器用ですから
なんたって俺is九州男児
余計言わねぇよボケ


『なんで言わないんだ?』

「言わなくてもわかると思ってるから。言葉にすることは、思って無くても、できるけど、態度ってのは思ってないとできない。要は言葉はそこまで信用性がないということで
だったら態度で示せば伝わるもんだと俺は思う」

『……。お前、分かりにくいぞ?誰にでも態度変わらないじゃないか』

「……そうか?」


思わぬその言葉に俺も困った
自分では態度にだしているつもりが、周りにはそうも見えないらしい


「……わっかんねぇ……お前はよく言えるな」

『好きだからな。言わないとわからないしな』


(言葉にだすことの難しさワロタ)


そんなことを思っている間に、クッキーもいい色に焼けていた
これでも持って、たまには言ってやろうか、好きって言葉くらい


『できたー!やったぞ!』

「おー、流石女子だな。袋詰めめっちゃ綺麗」

『ラッピングって言え。あ、そうだ。これは冷慈のだ』


そう言って、イシスが綺麗に袋詰めされたクッキーのひとつを俺に渡してくる
まぁ、ありがたく貰うけども


「おう、サンキュー」

『礼だ。教えてくれてありがとう』

「……別に」


(言葉で言われるのも思ったより悪くないらしい)









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