恐い怖いコワクナイ




夏の涼しい火、い、いや涼しい日。事件は起きたのだ
尊が青い顔をして、廊下を呑気に歩いていた俺へと走ってくる


「れ、れ、れれれ冷慈さん!」

「!?ま、待て待て。どうした?」


あまりの動揺に尊はとある暗闇の教室を指差して何かを伝えたいらしい
声もなんだか出ていないようだ


「……?視聴覚室……?」


多少嫌な予感はしつつも俺は暗闇のその教室へと足を踏み入れる
電気をつけようとパチパチっとスイッチを押せば、切れかけていたのか蛍光灯がバチバチバチバチっとつけたり消えたりしていた


「気味悪ぃな……」

「さ、ささささっき、人影が……!」

「はぁ?人影?」


そこで気づいた。誰かがそこに佇んでいることに


「っー……!!!!!」


途端にガンっという音がして横で尊が飛び上がった
悪い、今のガンってのは俺だ。あまりの怖s……驚きについ、手が出ただけだ


「誰じゃゴルァ!!俺をビビらそうなんざ100年はえーぞボケがああああ!!!!」


ズケズケと近づいていって、ガシっとそいつを掴み上げる
今だに電気は結構なスピードでついたり消えたりを繰り返している


「…………、さぁ……ん……」

「っ〜!!!!!!!!!!!!!!」


それはまるで本来なら見えないようなものになった草薙の姿だった。
思わず、そいつを投げ捨てて尊を連れて終始無言で走り抜ける


「ひぃっ、はぁ……な、んなんだよ!アレ!!すっげぇこえぇじゃなくて、リアルだったぞ!?」

「お、おう……れ、冷慈さん……だいじょぶか?」

「大丈夫なわけあるか!!見えないもんが見えたぞ!末期だ!俺はついにそうなったのか!?」


逃げ出した先の中庭で一人俺が取り乱しているときだった


「……くっ、ふ、あ、あっはははは!!」

「ふ、ふふふふふ……っ!」


木陰から草薙の笑い声が聞えて、尊が我慢できなくなったというように吹き出していた
なんだ、なんだ。なんか分かったけど、なんだ


「冷慈さん、すっげ、ビビりよう……あっはっはっは!」

「す、すみません。冷慈さんの怖いものが、心霊関係だって、彩詞さんに聞いてしまって……ちょっといつものお返しに。なんてしてしまったんです、けど……ふふふっ」



「…………おー、おー?いい度胸だなぁ?え?あぁん?」

「「…………」」

「急に黙るな?お兄さんに恥かかせてんじゃねぇぞゴルァ。え?」

「逃げるぞ草薙!俺には今の冷慈さんのが怖い!」

「はい!」


「待ちやがれ!今すぐ海の藻屑にしてやらぁあ!!!!」


(見えないものほど怖いものはない!!)








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