硝子の靴を壊した シンデレラっていうのは、無残なもので、大事なガラスの靴を落としていってしまう もちろん、そのおかげで王子様に会えたのだとしても 「……可哀想だ」 全ては幻で、一夜限りの夢だったというのに、今もまだ夢を見続けている 実際に、そんななんでもない一般人が例えば芸能人に恋されたとか、そんなものは所詮、芸能人の売名行為なんだ 「…………寝よう」 そういえば、この時間は昼休みだった。皆は思い思いの人とご飯を楽しく食べているんだろう いつもなら俺も月人さんと一緒だ でも、今日はどうしても一人でいたくなった まるで、居場所を見失ったような、そんな気分だった。意味もなく、とたんに考え込んでしまった ゆっくり目を閉じて、意識を手放す。でも、すぐに起きないといけないけど今は寝てスッキリしたかった 「こんなところにいたんですか」 「…………?」 本格的に寝ようとしたとき、頭上から声がして、思わず頭をあげる 薄らと開いた視界の先には俺の髪へ触れている月人さんがいた 「……おはよう、ございます」 「えぇ。もうすぐ授業ですがいつまでも戻らないようでしたので探しに来ました」 「……はい」 わざわざ、探しに来てくれたのか。優しい人だ 心が温かくなる。でも、これは (醜い俺が受け取るべき好意じゃない、と俺は理解している) (俺なら、シンデレラの硝子の靴を粉々にするのに) ×
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