不幸福理論



俺が目をつけた相手は、俗に言う"不幸体質"らしい
例えば、人食い動物に出くわしたり、食った大福の賞味期限が切れてたり、星の観測会に行けば雨が降ったり


(不幸体質……か)


ふと己の掌を見つめる。別に気にしたこともなかったけども。不幸か幸福かなんて
気にするだけ拉致が開かないことだ。幸福に浸れば悦に浮かれ人格は破綻していく
不幸だと思えば妬みに惑わされ救いようのないグズへと成り下がっていく

どちらもいいとは思えない


「何を考え込んでいる……。珍しいな柊がそんな顔をするとは」

「あー……おっさんは物思いに耽りやすいんだよ。……なぁ、ハデス。お前は何を基準に"不幸"だって言ってんだ」

「何を……基準……」


考え込むように黙りこくるそいつを見て、真面目だなと思う
俺のくだらなくはないくだらない問いに真剣に答えを探しているんだ


「……幸か不幸かなんて、興味がない。そんなことは俺が決める。俺が幸せだと思えば幸せだ。……他人を巻き込むのが嫌でも、それは結局はお前の思い込みだ。どれだけ悲惨であろうとも、本人にしか分からない。自分が不幸か、どうかなんてな」


説教染みたことをポツリと呟いて俺の勤務場所である保健室から出て行く

さぁ、一服でもしていつも通り女子生徒にセクハラでもするか


(幸せなんて欲するもんじゃない。幸せは全てを奪っていく凶器だ)






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