Prologue

夢を見た。誰かの泣き叫ぶ声が聞えて暗闇を歩くだけの夢を。

(ねぇ、ここ、どこ?)


どうやらまだ幼いらしい俺はただその暗闇に恐怖して、泣きながら自分すらも見えない空間を歩いているようだった。



「あいし……あいし……」


恐くなって、片割れの名を呼んでみても返事はなくて、どうしよう、どうしようと焦りと不安で息すらするのが難しく感じた。


『さぁ、こっちよ、たすけてあげるわ』


途端に真っ暗闇に差した眩しいほどの光に包まれ、暖かさを感じた





「……ん……」

「彩詞!何してんだ?」

「あ、哀詞……寝ちゃってたみたい……」


いつの間にか不思議な夢を見ていたようで、気づいたらもう昼休みになっていた
哀詞と一緒に食堂に向かいながら、ふと視線がある人と交わった


「あ、いたー!」

「う、わぁっ……!」


ドンッと俺に向かって飛びついてきたのは、なんだか日常的に笑顔の眩しい好青年。
名前は聞いてたけど、生憎忘れました。


「彩詞〜!!一緒に行ってもいい!?」

「……はぁ、ダメと言ってもついてくるのは誰ですかね」

「わー!ありがとう!」


なんと返していいかわからないことを言われため息をつく。でも、不思議と悪い気はしない。
むしろ、このハイテンションに最近は妙に安心をする。
なのに名前は覚えてないなんて俺、そこそこ失礼かな。


「おい、アンタ。セットのアホは今日はいねぇのかよ」

「あ!戯!?戯なら先に食堂で待ち伏せてるよ!」

「あー……くっそ行きたくねぇ」


戯と呼ばれた人は哀詞の友達で、なんか俺からすればちょっととっつきにくいというか、なんか腹が立つ人。
でも、嫌いというわけではないけど。


「今日は何食べようかな〜すぐ決めれないから困るんだよね」

「……いつものことじゃん」

「彩詞ってばひどいな!そんなことない、と思う!」

「あーはいはい」


食堂につけば、ドアを開けた瞬間哀詞と誰かの大声が重なって聞えてきた。
きっと、あの人だ。また性懲りもなくやって哀詞に怒られるんだろうな


「わぁああああああああああ!!!!!!」
「戯ぇええええええええええ!!!!!!」


あっという間に食堂で鬼ごっこが始まって、俺は半分呆れ、半分保護者の気分で今日食べたいものを適当に選ぶ


「あ、りんご」

「彩詞!りんんごはご飯じゃないよ!」

「誰もりんごをおかずに白米を食べるなんて言ってないよ?」

「そこまでは、言ってなかったと思うんだけどなぁ……」


どう考えてもりんごはデザートでしょ。今日はプリンはおいてないのか、残念だなぁと思いながら、目に付いたりんごをデザートとして食べることにした。

ちなみに白米とおかずは今日はサラダだけ。
最近地味に食欲が減ってきてる。こんなこと冷慈とか宋壬とかに言ったらものすごい睨まれ怒られるけど。


「あぁ、そうだ。ちょっと一個聞きたいことが……」

「お!なんでもいいよ!」


テーブルについて割り箸を割りながら、俺は横に居るこのハイテンションに忘れてしまった名前をもう一度、聞いてみることにした


「名前、覚えれてないんだ。もう一回、教えてほしいんだけどな」

「え、覚えられてなかったの!?」

「あはは、ごめん」


『いいよ、僕はねー……………………だよ』


「へ?」


いつもの貧血のめまいのようにクラリクラリと意識が歪みだしたせいか大事なところが聞き取れなかった。
フッと意識が消える寸前、その人の指に何か、ついていたのを見て、俺はそのまま意識を手放した


(『さぁ、貴方の知らない、貴方の秘密を探す旅においでなさい。このおチビちゃん』)

(誰か知らない女の人の声で俺は意識をボンヤリ取り戻す)

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