可能性の低さ
「うわー病院きちゃったよー」
前と同じで、父さんと柊さんと俺で来ているから、また、ひどく目立っている。
今回はそれにトールさんもいるわけで目立たないわけが、ない!!
平均身長、約190のヤンキーぞ。おいおいおい。
と言いつつ俺もリーゼント頭なわけだけども
抗がん剤とか打ち出したら禿げるからなできるときにせねばだろ
「今日入院だろ、んで体調見て、明日か明後日か〜」
父さんと柊さんが話を聞きに行った間俺は割り当てられた病室で早速ベッドに寝転がって呑気に考えている。
トールさんのほうが、落ち着かないようであれやこれやと見ている
まぁ、そらそうかすんでる世界が違いすぎるわな。
「はは、やっぱ珍しい?」
「……あ、あぁ。……凄いな、人間は」
「……今はトールさんも人間だろ?フリだけど、人間人間」
ニッと笑って言えば、トールさんも少し、表情を緩めた
それにしても一人部屋をとるとか父さんまじでか。と自分の病室をまじまじと見渡す
てっきり相部屋かと思えば、どうやら一人部屋らしく。まぁ、有意義に過ごせそうで、何よりだけども。
「ん〜〜今日は何すっかねー、安静にだし飯食えないしお茶飲めないしあーー」
明日、手術終わるまでの飲食禁止とか育ち盛りにひどいぜ
……もう20ですけども。
「……それは、キツいな」
「そうなんだよー。鬼畜だっての。飯も楽しみの一つなのにそれが潰れるんじゃ俺何すればいいんだー」
「……俺でよければ……話し相手にはなるが」
「もーマジでトールさんいっぱい喋ろうぜもうマジで」
窓から入る日がちょうどいい感じで、人間の容姿のはずのトールさんを、神々しく照らす
(……神様オーラハンパねぇ)
「……ルア?」
「え、あぁごめんあそばせせ〜ボーっとしてたわ、腹減っちゃってさー」
「……そうだな」
まぁ何も食べれないわけですが。と自分でも思いながら、トールさんにくだらない話をしながら、時間を潰していた。
「全く、本人は呑気だね」
「あ、父さん」
「明日にでも、リンパに移ってきたのをとるっていってたよ」
「あー了解〜」
ある程度時間がたった頃、父さんと柊さんが戻ってきた。
特に深刻そうな表情はしていないけども。
(本当に深刻じゃないのかねぇ。気にしても仕方ねぇんだけど、ここまでくれば)
ある程度割り切っておかなければ最悪の事態を聞かされたとき、一発で滅入ってしまいそうで。
ストレスで悪化は避けたい。
「……大丈夫、だろうな」
「大丈夫大丈夫、ここの先生腕いいから」
保護者気質からか心配そうなトールさんが、妙に面白くてちょっと笑いながらも大丈夫なことだけは伝えた。
本当に大丈夫かは、曖昧だけれど、まぁそんな早急に死ぬってわけでもない
「……おい、トールちょっと、付き合え俺らは腹が減ったら飯食えるからな。買いにいくぞ」
「……あぁ」
「あーずっりぃ、俺も腹減ったなぁ」
そんなことを言いながらトールさんと柊さんに手を振って、送り出した
病室には俺と父さんがいるだけ。
まぁ、それと言って話すことがないんだけども。
「……。おい、覚悟はしとけよ」
「……は……?」
「この間の血液検査の結果が思ったよりひどくてな……
いつ死んでも、おかしくない、らしい」
(ガン細胞が、すぐに全身にまわるそうな)
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