2日目

次の日は、起きて早々思わず身震いをした。
異常に寒い。とても寒い。

パッと窓を見れば、俺の住んでる地域ではここまでにならないほど、綺麗な白銀の世界へと変わっていた


「おぉ!!雪だ!!」


思わず喜んで窓を開ける。
当然、若干の薄着だった俺は開けてすぐ窓を閉めたけれど。

今度こそちゃんと着込んでから、窓を開ければ、雪球がどこからか俺の顔面へと飛んできてクリーンヒットした。

痛い、冷たい。


「つっめてぇな!!誰だよ!!」

「やーい!おルアの負けだよーん!」

「ロッキー!!それに草薙ちゃんにおバルにトールさんまで!皆してやりおったな!」


外にはニシシッと笑うロッキーと楽しそうに笑う草薙ちゃんとおバル。
それから、ほんの少し微笑んでいるトールさんがいた

あまりに楽しそうに投げてくるので、俺も急遽、靴を履いて窓から飛びだして、参戦する。


「ウォラァ!っしゃー!やったりー!」

「ちょっとー!?おルアー!チョー痛いんですケドォ!?」

「さっきの仕返しじゃロッキーめ!」


寒いとかそんなことを思う暇はなくて、ただただ馬鹿みたいにはしゃぎまわる。
ふと、脳裏をこれが最後のこんなに綺麗な雪景色の中の光景になると思うと、胸がひどく痛い。



「……」

「……ルア……?」

「あ、あぁ、なんでもない、なんでもないぜ!」


なんだかんだトールさんも楽しそうで、その優しげな表情を見ながら、なんとなく、思う。
俺が死んだら、この人はどうなってしまうのだろうと

考えても今は仕方ないことなのに。


「……、トールさん、いくぜ!」

「!!」


不安を振り払うように雪球を投げつけた
考え込んではいけない。後悔しないように、生きていけばいいのだから。


「へへっ、つめてぇなー!」


雪でびしょびしょになりながらも、外へ出てきた麗菜達や冷慈達も巻き込んでかなりの人数で雪球をぶつけ合う。

楽しい。楽しい。楽しい。

一瞬の時間にとても楽しさを覚える。
この楽しさだけを感じてずっとずっとこの先も生きていければ、いいのに。


「ルアー!いくぞー!」

「おうよー!」


刻一刻と迫りくる残りの時間を俺はなんとなく、わかっている。
それもなんとなく。
きっと、明後日病院へ行ってしまえば、一気に俺は弱っていく。


「おい、何勝手に外に出てるんだお前は」

「あ、柊さん!すっげぇ楽しい!」

「わかったから、戻って来い。お前は特に」

「ちぇ、つまんねぇなー」


文句を言いながら、保健室へと戻る。いつの間に用意してくれていたのか柊さんが俺の着替えを置いていてくれたから、いそいそと着替える。

あーあ、あと1日と少しか。ここにいれるのも。とため息をついた。

こんなに現実離れした空間、ずっといればこれ以上悪化もしなければ、このままでいられるような気がした。
そんなわけ、ないとわかってはいる。


(今更……センチメンタルに浸っても、しかたねぇよな)

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