保健室登校?

「よーっす」


次の日、何食わぬ顔で俺が教室に入れば、視界がいきなり動いて目の前に多分、キレていらっしゃるトールさんがドアップでうつった

思わずギョッとするものの、その向こうで、バツの悪そうな顔をした草薙ちゃんがいるのと、不安そうだったり泣きそうだったり、半ギレな仲間がいるのを見てとりあえず悟った。

(草薙ちゃんめ……言ったな)


「……ルア、どういうことだ」

「どうって……何がだよ?」

「……草薙に聞いた。……吐血をした、とは俺は聞いていない。お前がそんな体調だったとも聞いてない」

「……咳のしすぎで喉がやられたんだって!大袈裟大袈裟!」


ハイハイとトールさんの手をポスポスして外してもらう。
実際、喉がやられてただけかもしれないし、俺の思っている病なのかもしれない。でもこればっかりは俺は医者じゃないのでどうしようもないしわからんので無責任に言うことはできない。

これ以上無理は禁物なのは自分がよくわかっているけど、俺には"約束"があるから、いつも笑ってきた。
だから、今も俺は"まるでいつも通り"笑ったつもりだった。


「っ……うっ……ぇ……っ」

「きゃぁああっ……っ」

「……っ、ルアっ!」


嫌なタイミングでこみあげてきたものをおさえこめずに素直に吐き出せば、また地面に赤い液体が移った。
あぁ、もうこれはー……


「……っ、は、ぁ……っ、くっそ、こんなっ、こと、してる場合じゃ……っ」


肩で息をしながら気づけば目の前が暗転した。



どうやらやら、意識がぶっ飛んだようで、夢なのか、今度こそ天国なのかよくわからない場所で俺は一人フラフラと突っ立っていた。

真っ白いこの世界には色とりどりの多分、これは彼岸花が咲いていて、見る分には綺麗だと思った。


「……ルア、もう来ちゃったの?……ダメだよ?」


目の前には格好はなんというか、うん、天使がいた。
見覚えのある顔で、その人は俺のことを悲しそうに見つめていたから、心臓が鷲掴まれたように痛くなった。


「ほら!まだ皆が呼んでるんだから、まだ貴方の命は尽きてないんだから早く戻らないと。ね?約束、忘れちゃダメだよ?……どんな時でも、貴方が笑えば皆が安心するの、ね?」

「……まっ、て……XXXX……」


スッと背中を押されて、真っ白な世界が色をつけていく。
それと一緒にまた俺の気も遠のいて、消えていくXXXXに伸ばそうとした手も届かずじまい。

でも最後に呟かれた言葉はハッキリと聞えた。


「    は、幸せだったよ」


(……そっか、幸せだったんだ……)





「ルア!!」

「っ!!」


ガバッと飛び起きればガツンと誰かと頭をブツけた。痛い。この痛みはひどい。
誰だと思いながら確認すれば麗菜が頭を押さえてうずくまっていた。お前かよこの石頭が。

どうやら意識がいきなり飛んだせいで全員に心配されていたようだ。
そらそうだろうけど、なんというか、こう変な感じである。


「……大丈夫か!?」

「お、落ち着けって、トールさん、大丈夫、大丈夫一応……」

「っ、おい!!どこだ巨人!」

「え"」


しまいには柊さんまでもが大慌てで教室へ殴りこむように入ってきて、大騒ぎだ。
もう、ほら、今はこんなピンピンなんですが。と思いながらも、いつも通り、ここですよーと挙手をしておく。


「この馬鹿がっ!お前いい加減にしろ!自分が患った病の種類ぐらいもう嫌でもわかっただろうが!」

「……いやぁ、うん、わかったけどよ……そんなに怒んないで〜ルア困っちゃう」

「……」


問答無用と言いたげにゲンコツを頭上に落とされまた俺は物理的に頭が痛くなった。
一応ね、これでもさっきまで死に掛けてたの、分かってます?お前等さぁ。


「いいかお前等、こいつは今から当分帰ってこない。泣こうが喚こうが連れてくぞ。人間の病院とやらにな」


(でもさ柊さん。事実は知らない方がいいのさ、いつだってな)

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