埋もれた才能


「あーつっかれた……お前らさー俺を駒みたいに使うの止めねぇ?」

「えールアは俺の駒……あだっ!?」

「ごめんな。手伝ってもらって」

「別にいーけどよ。憧れのリメレさんなわけだしな。……この状態じゃ普通のヤンキーにしか思えねぇけど」

「「「「「「お前が言うのかよ」」」」」」


どうやら次の新曲がまたダンスナンバーのようで振付に悩んでいたようで、運動神経のあるイケメンどもはそれぞれ考えてきたものを踊っている

俺はそれを見ながらあくびをつく


「おい!!あくびするぐれぇならお前が振付師しろよ禿げぇ!」


リメレのリーダ兼ボーカルが俺にそんな文句を飛ばしている
なんでただのファンの俺が振付師なんざしなきゃなんねーんだよ
バカか?バカだな。俺もだけどこいつもバカだったな


「はぁ?俺はタダノファンですー。嫌ですー」

「ねぇ、おねがーい、ルアちゃーん」

「雪、キモイ……」

「チッ」


キモイとか言いつつこいつ等の素のノリは嫌いではないから、普通に俺がはっちゃけずに、素のままでいれる
はっちゃけてるのは、外面だけで。


「しゃーねぇから考えてやんよ」

「おっしゃ!お前無駄な才能の持ち主だもんな」

「無駄って言うな無駄って」


そう言いながらしゃーなしに立ち上がった時、視界が反転した
あれ、おかしいな。俺、立ちくらみとかするようなヤワな奴じゃなかったはずなんだけど

(……俺は、どうすればよかったんだ……)

どこからともなく脳裏に直接響いてくる聞いたこともない後悔にまみれた切なげな声と慌てふためく親友たちの姿を最後に俺の意識はブツリと暗闇へひきずり落とされた


(俺、死ぬのか。あっけねぇ最期なこった。)

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