無意識の覚悟
「……大丈夫か」
「はよー!!トールさん!!」
次の日の朝っぱら、トールさんが心配してくれていたらしく部屋まで迎えにきてくれた。
こういう妙な優しさも似ている。驚いた。と脳内の人物とトールさんを無意識に比べている。
元気そうだなと安心したような表情を浮かべて、外へ行こうとするトールさんの腕を引っつかんだ
「……?」
「……あの、さ、変な、こと言ってもいいか?」
自分が何を言おうとしているのか、理解した途端現状がとてつもなくこっ恥ずかしいものに思えてきた。
ただ、ここに来てから何かと全部、助けてもらっていたからか、いつの間にか俺の中でトールさんの存在が大きくなっていた。こんなに早く気づくとは、流石俺。伊達に遊んでねぇな。と自分で自分に若干呆れながらも、次に言わなければいけない言葉を探す
「……あの、さ、いきなりだけどさ、俺と、付き合って、みま、せ、ん、か」
「……」
「!?うわぁああああちょ、タンマ!無言!無言よくない!俺今なんかもう、うぐぁああああ!」
「……構わない。ルアが、俺でいいというなら」
「へ!?」
思ってもみなかった返答にこっちがキョドった。当の本人は、同性愛になることなんか微塵も気にしてない。といったような態度だったけれど。
流石、神様。多少のことじゃ驚かないらしい。
思いつきで突拍子もなく発せられた俺の言葉に若干の驚きの表情は見せたものの、すぐにこう、対応をされると、若干俺が、若干うぐぁ!となる。
こんな反応、まるで麗菜のようだが仕方ない。昔から兄弟のよう育ったし無理も無い。そうだそうだ。
「……愛を、学ぶにはもってこい、だ」
「……あ、あぁ!!そういうことな!?」
まぁ確かにそうである。おまけにここは人間の常識なんか通用しないらしい世界だから、変な話同性でも愛を学ぶことなんかできるわけか。なんという。
俺の照れ損じゃねぇか。
と、あまりの恥ずかしさに撃沈寸前のときにこの無意識男前は、堂々と爆弾を落とすのだ
「……ルアは、好きだからな」
「!?!?!?」
俺は、好き、らしい。それがどういう意味でなのかはもう聞かない方でいくとして、これは付き合うという方向性でいいらしい。
よーし愛を学ぼう〜。ルアくんお利口だから頑張るわ
まぁ実際問題、多分無理な気がするけれど、これをまずはクリアせねばならないらしい。
やるだけやってみよう。それに、どうやら、俺は俺の中で大きくなった存在のトールさんにどうも割りとマジに好意を抱いてしまっているようだ。
「……よ、よーし!と、とっととりあえずいつも通り生活を……!」
「……右手と右足が一緒に出てるが……」
あまりの動揺に赤面した顔を隠すことも忘れて、まさかの右手右足を同時に出して歩いてしまった。
これは格好悪い。実に格好悪い、ヤンキー頑張れ
と思ったものの、どうやら羞恥に勝てなかったようで、俺の脚はヘナヘナと地べたに崩れた
「くっそ……!この無意識男前め……!!」
「……褒められている、のか?」
「褒めてるよ!!全力で!!」
「……そうか、ありがとう」
「あーあーあーあ……!」
床をドスドスと殴りつけて気をごまかす。
はっずかしい。しかしなんで俺はまたいきなり自覚して、いきなりこんなことを言ってしまったのか。
まぁ結果オーライなんだろうが、急に意識したもんで俺の心臓がこれじゃあもたねぇよ!!
「……そんなに殴ると、怪我するぞ」
「っ!!」
そう言って俺の手を優しく止めてくるからこれまた質が悪い。自覚なんかないだろ!?ないよな!!
うわぁあああと思いながら慌てて立ち上がって、今度こそ!と歩き出せば、また右手右足が同時に出ていたらしく、軽く、優しく笑われた。
だから、その顔、やめてほしいんだけど
(その顔に弱いから、俺が!)
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