コホンケホン

「げっほげっほ……」

「……ルア、大丈夫か?……長引いてるんじゃないか?」

「大丈夫、大丈夫!」


最近長引いてる咳き込みをトールさんが心配そうに背中をさすってくれることが増えた。
別に何があったとかでもなくて、ただ咳がでているだけなんだけれども。
苦しいほどでもないけれど、なんかこうむせ返る様な感じの咳で


「喘息か?いやいや、そらねぇか、肺炎?いやぁ俺だしなぁ」

「……ゼンソク?……ハイエン?」

「あぁ、なんつーか……人間のかかる、病気、みたいな……」


思いついた病名をあげてみるも、別にそのどっちものように呼吸困難に陥るような咳ではなし、発作もない。
どれも思いつかないということは、やっぱり風邪だろう、と思いまたトールさんに別の話を振った


「あ、それよりさ!トールさんって料理うまいんだろ!?」

「……上手いかはわからない。……作るのは好きだが」

「そら上手いはずよな!うんうん!今度さ、俺にもなんか作ってくれよー!」

「……あぁ。それはかまわない」

「いよっし!!」


ガッツポーズをして喜べばトールさんはほんの少し笑っていた
その表情が、俺の知っている人の笑顔に一瞬重なって、また思い出す



「心配だなぁ」

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、な、ルア」

「おうよ!今日もな父さんが飯作ったんだけどなんかすっげぇ、うん、頑張ってたわ」

「ふふふ、いいなぁ私も急いで退院して、そのご飯食べなくっちゃ!」

「そうだそうだ!」

「早田さーん、お時間ですよー」

「あ、呼ばれちゃった、行ってくるね」

「……いってらっしゃい」

「いってらっしゃい。控え室で待ってるからね、俺とルアは」

「ふふふ〜わかったよ」


「……ルア、そんな顔しなくても大丈夫だよ。今日のは検査をするための手術でもあるんだしね」

「……ん、わかってる」




病室であの人は、今のトールさんみたいに、優しくてなんだか儚く笑っていた
だから気になって気になって、ただじっと見つめていた
トールさんも何だ?と言いたげに俺をじっと見ているから、端から見たらなんで見詰め合ってるんだっていう状況。

(あぁ、俺はXXXXに似ているらしいけど、あんなに綺麗になれるんかね)

似ているだけで、あの人のようになるのは難しいだろうけど、もしもまたあの状態になってしまったらきっと俺は、どうにも動けないだろう

その人の幸せは俺が決めることでは、ないから。


「げっほげっほ……」

「……今日はもう休んだほうが、いいんじゃないのか」

「……あー、ちょっと、ダルいし……ただの風邪だろうから、ちっと、今日は寝てるわ」


俺の体内免疫の強さを見せ付けてみせるぜ!一晩寝たら!ハイ!元通り!!
まぁ、大概いつもそんな感じだし、今回もそうだろう


(そう決め込んで、俺は脳裏に浮かんだ嫌なXXを選択肢から掻き消した)

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