Prologue

「やめろ、やめろよ…父さん。そんなの父さんが辛いだけだろ!?」


俺の声など届いていないと言わんばかりに父さんは、人生の決断をあっさりとしてしまった


「うわぁあああああっ!!」


また思い出したくもない過去を夢で見て飛び起きる
跳ね上がっている心拍数を鎮めるように、深呼吸を繰り返して、泣いた。
幼馴染ですら入ってこれないように、部屋のカギを2つもつけた理由だった

(落ち着いたら、いつもの俺に戻るだけだ)


あの時の衝撃が酷くて、いつの間にか俺は成長することを拒んだ
年だけ重ねてはいるものの心はあの時と同じ16歳のまま
大人になる必要性はない、と駄々をこねている


「……。なんで、それでも幸せそうだったんだろうな」


この世の中なんてバカな俺には分からないことだらけだ


「……用意、すっかな」


いつも通りバチッとしたリーゼントに仕事用のツナギを着て、家を出る
今日も、大人のフリをしなければいけない
俺はまだ子供なのに


「……今日はどんな女の子に慰めてもらうかね」


俺の逃げた先は、体と体の交わり
快楽の行為
一時の戯れ。


「うっし!行くか!」


外へ出れば春ならではの心地いい風が俺の頬をなでる
イヤホンからノリのいい曲が流れているのを聞きながら、歩いているせいか、曲に合わせた歩幅になる


「ルアー!お前今日もかー!寄ってけよー!」

「あ、颯斗」


俺の大好きなアーティスト、Remember Routeのサブボーカル兼ダンサー、芸名
は光と名乗ってる奴がとあるスタジオから顔を出していた


「お前の仕事先になら連絡してやっからー!」


実は誰にも言ってはないが、俺はリメレのメンツと不良仲間だったりする


「あぁー今あがるわ」


ここも俺の逃げ場のひとつ。俺と同じ、成長を拒んだ奴らの集まりだからか居心地がいい


「あれ、ほかのメンツは?」

「あーたぶんまだなんじゃね?予定より2時間早いんだわ」

「はぁ?暇人だな、豪華アーティスト様も」

「いやいや!冗談言うなよ!忙しい方だっての!」


颯斗が俺の会社にリメレの光として連絡を入れ、そのまま俺もリメレのバンド練習に付き合うことになった
まぁ休みが重なれば割とこうやって会ってはいるけど
もちろん麗菜達にも言わずに


「……俺とお前が並ぶと巨人と小人だな」

「颯斗、チビだもんな」

「うるせぇ……195cmは黙ってろ」


颯人とリメレでは珍しいダンスナンバーを掛けながら振りを踊る
いつもいつもやたらと覚えさせられるせいで、俺までこうやって巻沿いをくらっている


「……お前さぁー、そんだけ踊るのうまいんだからいい加減俺たちと一緒にバカ騒ぎしよーぜーなぁー」

「はぁ!?やだよ!俺はファンとしてお前らに騒いでる方が楽しいんだからな!」

「いっつもそればっかだなー!」


踊りながらそんなことを話す
こういうダンスナンバーはすげー好きだ
バンドならではのロックも好きだしこいつらの書く曲は全部好きだけど、踊れるのはいいよなぁ。と思う

俺には満田家みたいに空手するみてーなストレス発散はないから非常に楽しい


「おー!なんだールアも来てたんじゃーん!」


颯斗と踊っていれば少しずつ時間が過ぎるごとにリメレのメンバーである俺の不良仲間が集まってくる
どうせどいつもこいつも時間なんて守ってねぇんだろうな
この様子じゃ。と休憩の合間に水分を補給しながら考える


(居心地いいわ、ここが一番。泣きたいときに泣ける場所)


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