放課後の嘆き

「……っ、と」


放課後、早速一人で体育館を使って踊る。
もぎとらねばならんのだから、練習あるのみだろう。


「……ルア、一人でやる気か……?」

「あ、トールさん!いやぁ、つい、身体が動いちゃってさ〜困っちゃうよなぁ」

「……そうか。……ルアがやるなら、俺もしても、おかしくはないだろ?」

「……へ!?」


トールさんの言い分に驚いたものの、そういえば、俺とトールさんは同じ、ダンス部だ。
そらそうだ。むしろダンス部として出たほうがいいかもしれない。
まぁ確かに、高校の時も一人ではなかったけど。麗菜が一緒だった。何かと。
付き合っていたわけではない。生まれたときから家族同然だったせいで何かと一緒だっただけで。


「馬鹿ルアーーー!!」

「「!!」」

「今年は俺とふざけない気かお前!!」

「麗菜……」

「なんか面白そうだからオレも混ぜてほしいんだけどなぁ〜」

「酒!」

「……ディオニュソスね!?」


やってきた麗菜の目が腫れていた。ほんと少し、だけど。
本当、涙腺の弱い家族である。困った困った。

驚いている俺を置き去りにして麗菜はトールさんと酒仲間と早速話し込んでいる。
呆然とした俺に気づいたらしいトールさんが手招きをしてくれる。


「よーっしゃ!今年はいつもの倍楽しそうだな!」

「おうよ!俺がまた加わってやるんだ、ありがたく思いなヤンキーめ」

「サンキューなスケバン!」


ガシッと麗菜と腕をぶつけて今度は俺と麗菜が話し込む。
内容なんて、曲をどうしようとか、そんなこと。ゼンはナントカ。なのだ。


「これは?リメレの最新曲よ」

「うおぉおお!!?なんだこれかっけぇえええ!!え、待って、なんでお前もってんの!?」

「あ、わけありで!」

「ぐぅあああああずるいぃいい!!」


ガクガクと麗菜に両肩を揺らされるもんで、首から上、つまり頭が赤ベコのように揺れる
やばい脳みそがシェイクされてる!やばいこれはやばい!

案の定やっと開放されたと思ったらフラフラする状態だった。
これは、脳みそ、生きてる?がんばれ、俺のクルトン脳みそ


「もうそれ決定だろ!きっと喜ぶよ!お前が楽しそうなら!」

「……喜ぶ……?」


つい毎年言っていた癖なのか、その違和感が駄々もれている台詞を聞いて、トールさんが首をかしげた。斜め15度くらいに。あ、間違えた、斜め80度だ。15度ってやばくね?これもさっきのシャイクされた結果だ。おう、きっとそうだ!



「あ……」

「なんでもねぇよ!まーた麗菜がなんかわけわからんこと言ってんべ!」

「お、おうともさ!?俺変人だからな!」

「アレだろ!トトセンセーからのあだ名だろ!」


適当に会話で流せばそれで充分。根堀り歯堀り聞きたいというなら話すことはできる。文字にして、10文字以内で簡潔にだって言えるような内容。
なのに、とても重く苦しいもの。


「じゃあお前のあだ名はなんなんだよ!」

「俺?俺は確かな〜なんて呼ばれたっけなぁ。……あ、なんでかはしらねぇけど、"きんき"って言われたな」

「キンキ?キッズ?」

「いやぁ、まさか……いくら博識とはいえ……!それにそんな俺がキンキだなんて……!いやぁ照れr」

「あ、ごめん。お前がキンキとか無理だったね」

「………………」


いつも通りに持ち上げておいて突き落とすとは、俺の家族同然の幼馴染はアイも変わらず俺に酷いようです。


(齢20のそこらのハーフアメリカンヤンキーはタブーの日本語訳を知らない)

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