これが生きがいだと聞いたから
「よぉーし!みんな!よぉーく聞いてね!よぉーくだよ!」
「お!どうした重複ボーイ!」
「文化祭!文化祭をしようと思うんだ!」
「おぉ!!俺の大好きぶんかさーい!」
突然の提案に、何がなんだかわかっていない神様連中もいるようだが、重複ボーイのその意見に俺は大賛成といったところである。
個人的に文化祭は、思い入れが、強いから
「俺さ俺さ!やりてぇことがあんだけど……」
「……」
俺の提案に全てを理解したらしい麗菜は俺から顔を背けて外を眺めていた。
「文化祭、ステージ発表?みてーなのねぇの?ほら、ステージでなんかやりてぇ人だけ集めて、オーディションみたいなのして勝ち抜いた奴だけがもぎ取る!的なさ!」
「ありますよ、その話もちゃんとアポロンさんたちと、してま」
す、と草薙ちゃんが言おうとしたときだった、ガタンッと大袈裟なほど音を立てて、麗菜が席から立ち上がって、逃げるように出て行った。
あいつも、知っているから俺のことを全て。
どうして、俺が、ピーターパン症候群のようになってしまったのかも。
「麗菜さん……!?」
「……おい、ルア兄、本気かよ……」
「おう!俺がいつそんな冗談言ったことがあるか!」
「……。俺、姉ちゃん連れてくる。草薙、気にしねぇで話進めてて」
麗菜が知っているということは当然2つしたの冷慈も知っている。
だから、目で念を押された。
"いつまでそのままなんだ"と。
「……あの、ルアさん……」
「ささっ!草薙ちゃん詳しいこと教えてくれって!なぁ、頼むよ!」
「え、で、でも……」
「あの姉弟なら大丈夫大丈夫!ちょーっと思い出に苦しんだだけだって!」
「思い出、に……?」
「そそっ!まぁ、細かいことは気にすんな!ほら続き続き!こんなに俺がやる気だしてるのよ!教えない気じゃあないでしょうね!?」
ふざけて言えば重複ボーイがそんなんじゃない、そうじゃないよ!とまた重複した。
さすが重複ボーイ。
そう、細かいことは気にしては生きていけない。
大雑把に図太く、笑顔でいることだけが、今の俺にできることだと、信じている。
「よーし!それじゃあそれじゃあ!1週間後の放課後!早速オーディションしちゃうよ!」
「えぇ!?そんなに早くにですか!?」
「善は急げ!ってやつよな!!」
「そう!そうだよ!ゼンはナントカ!」
一人で舞い上がるように喜んでいる。
ばんざい、三唱!
(これが、あの人の楽しみで、生きがいだと昔本人から聞いたから。俺は、守るから、どうか見ていて)
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