俺と月の神様

「…………こんにちは」

「こんにちは」


ここにはおいしいご飯をたくさん食べるために食堂があると聞いて、食堂に行こうとした夜。
一人で来たのが間違いだったのか、迷ってしまった


「……あの、食堂、どっちですか」

「食堂ですか?……食堂ならもう閉まっている時間ですが……」

「あ、そうなんですね……わかりました……」


その人はなんだか波長があうのか話しやすかった
話しやすさで言うなら冷慈よりも上な気がする


「……あなたも、神様ですか?」


だからだろうか、珍しく自分から話しかけてしまったのは


「はい。日本神話のツクヨミです」

「月の神様……じゃあ今は、月を眺めてるんですか」

「そうです。ところで、君も神様でしょうか?」


綺麗な月を見ながら、俺にもされたその質問にどう答えるのが正解なのか迷った
俺は"神様"になるかもしれないというだけでただの人間なのだから


「……あ、そうだ。冷慈と同じ感じです」

「……、つまり、神になるかならないか、ということでしょうか?」

「……えっと、きっと、そうです。……歳徳神?って言われました」


あまりの話しやすさに違和感さえ覚えて、そのツクヨミさんをジッと見て、いると目があった。
向こうも動じもせずに俺を見ていた

そこで気づいたんだ

この人は、俺と一緒で、中身がないのだ、と
……そんな言い方をしたら失礼だろうか

言い直すなら、無関心。目標もなければ夢もない
ただなんとなく過ごしている。

そうじゃないのか、と思っていた


「……不思議です。君はなんだか話しやすい気がします」

「……俺もです」

「……それでは、俺は今からしなければならないことがありますので」

「??」


あれ?俺と、違う?
俺には、しなければならないことなんかないのに


「……月を眺めるだけですが、それが俺の義務であり、使命なんです」

「……あぁ、なるほど……」


(なんだ、似てるだけで、中身は俺の方がないのか)

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