お祭り飯

「わー……はじまるね」

「だな」


いよいよ夏祭りの開催だった。ただの俺の連想ゲームから発せられた行事がこんな大事になるとは思いもしなかったけど。


「この日のために協力してくれてありがとう!全校生徒、そして生徒会の皆にお礼をする!本当にありがとう!では!それでは!待ちに待った夏祭りを開催する!!」


やった、始まった、いっぱい食べよう。となんとなく意気込んでおく。
冷慈達は俺のあの作業を付き合ってくれて置いて、今からは自分たちの屋台に行くらしい。元気だなぁと思いながら皆を見送る。


「月人さん宋壬さん。お祭り一緒に回りましょう。屋台を巡る間に飾りの不備も確認できますし」

「了解です」

「うん」


出ている屋台はどれも人間の世界と大差なくて、焼きそばとかたこ焼きとかリンゴ飴とかかき氷が並んでる。
この日限りで支給されたお小遣いで、俺は食べ物を全部食べる気でいるわけだけど。
手にはすでにはしまきと焼きそばがある。


「月人さん、寄りたいところはありますか?」

「いえ、日白義宋壬が既に回っているので、一緒に見ています」

「あ、そうですね……宋壬さんはやっぱり食べ物が多いんですね」

「うん、おなかすいてる……そういえば、冷慈がこっち来いって言ってたよ」

「じゃあ、行ってみましょうか。ちょうどステージの近くですし」


ステージそばの冷慈と冷慈に似てる人がやってる屋台にいけば冷やしパインを売っていた


「冷慈ちょうだい」

「食いもん目にした瞬間の動きが俊敏すぎるだろ、お前」

「いいから」

「はいはい。尊ー、そこに置いてるやつとってくれ」


冷慈に似てる人がうしろにおいてあるクーラーボックスから取り出したのは冷やしパンイ10本詰め。
流石冷慈。よくわかってる。


「はいよ」

「ありがとう、コレあげる」

「食いかけの焼きそばってお前……」

「俺今から冷やしパイン」

「はいはいサンキューな」


俺たちが会話をしている横で月人さんも弟さんと話している。
楽しそうだ。冷慈に似てる人が。


「あにぃ!やっと来てくれたのか!ずっと待ってたぜ!」

「お待たせしました。では、2本、もらってもいいでしょうか」

「おう!ちょっと待ってくれよな!」


そんな様子を見ながら、冷慈が優しく微笑んでいた。
本当にお節介というか、人のことを見てるんだな。


「冷慈、お疲れさま」

「ん?そらお前の方だろ。お疲れさん」

「うん、じゃあ、ちょっとステージ見てくるね」


いってらっしゃい。と冷慈に背をおされ、俺は二人に声をかけステージの方へいく。
そこではちょうどルアくんたちがかっこいいダンスをしていて盛り上がっている。

楽しそうに踊る姿はキラキラして見えた。
まぶしいなぁ俺には無理だなぁと思いながら見惚れていると、二人からまた屋台を回ると言われ少し慌ててついていく


「……わぁ」


何やら行列を作っている屋台をみつけて興味をそそられる。
なんの食べ物だろう。と少しウキウキして覗いてみれば、なんだ、射的かぁと肩を落とした


「かわいい……」


草薙さんの目線の先にはうさまろより大きい白ウサギのぬいぐるみがおいてあった。
それにしても、おっきいな。と思いながらじっと見る。
射的は俺より冷慈のが上手だし、落ちなかったらお金もったいないしなぁと思っていると


「取ってきましょう」


と声が聞こえた。意外だ


「え、いいんですか?」

「必要なのでしょう?」

「はい、必要です」

「了解です。任せてください」


(すごい、目の前がリア充だよ)

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