うぅん


「で、どうしましょうか……」


昼休みになって、屋上で冷慈からちゃんと奪ったお弁当を食べながら、草薙さんが困っているのを見ている。
勢いで言うから……と思いながら、今日もいい天気だなとボヤいてみる。


「体育館を開放して壇上を使うなどすれば、出来ると思うのですが」


まぁ、それが学生にできる一般的考えだもんね。と脳内で賛成をする。
卵焼きがおいしい。流石チンピラ冷慈。


「却下です」


俺が卵焼きを味わっているときに、まさかの却下が出てきた。
月人さん、やる気だなぁすごいなぁと他人事のように耳だけ一応は傾ける。


「何か妙案が?」

「複数の生徒から要望が上がったということで、ステージは需要が高いと考えられます。故に妥協すべきではないでしょう」

「それで間に合います……?」

「間に合わせるんです」

「え、ちょっと、待ってください。月人さん、……本気ですか」


思わず俺が食べることをやめ、聞いてしまった。
え、大丈夫かな、俺は役に立たないから、これは絶対。
間に合わせる、自信がないよ。


「俺が冗談を言ったことがありますか?」

「ありません。全然ないです。いつもなら任務遂行の可能性を重視して判断することが多いのに、珍しいですね」

「俺はただ祭りを成功させたいとそう思っているだけです」


すごいなぁ、本気なんだな、と、実感して俺がどうするべきかを少しだけ考えてみる。
……何も出てこない。こういうときに冷慈でもいると便利なのになぁ。
俺がどうすればいいか教えてくれるし、何より手伝ってくれるしこういうことに向いてるのは冷慈とか、ルアくんだと思うし。

あ……そうか。


「ただ俺一人では手が足りない。君も、日白義宋壬も一緒に手伝ってくれますか?」

「もちろんです!私も一緒に引き受けた責任があります。宋壬さんは、すみませんでした……。つい、無理矢理……」

「大丈夫……。嫌だったけど、今は大丈夫かもしれない」

「!!でも、あまり無理はしないでくださいね」

「無理です」

「……」

「む、無理?」

「厳しい予定です。無理をしなければ終わらないでしょう。ですから君と無理をしないという約束を交わすことは不可能です。ただ、君に心配をかけないよう努力はします」


そうだ、無理しなきゃ終わらないのかな…と夏祭りまでの日程を考えながらぼんやりと考えてみる。
俺のできることなんか少ないから、できるようになれば、いいんだ。
珍しいほどにプラス思考だ。

あいにく、手先の器用さは自信がある。料理に関しては壊滅的だとしても。

ほんの気持ちだけ急いでお弁当を食べて、教室に戻りたいと言えば、もう食べ終わった二人も一緒に戻ってくれた。


「冷慈……お弁当、ありがとう」

「お前なぁ……おかげで俺は購買のパンだ」

「うんよかったね」

「おい」


何気ないやりとりをしてから、冷慈にそっと耳打ちをする。


「……!え、え!?」

「……なに」

「宋壬、お前、どこで頭ぶつけてきた……?」

「失礼……」

「あぁ、悪い、いやだって朝あんな嫌がってたろ」

「……巻き込まれた」

「……はは」


何もしないというのも、好きだ。楽で。
でも、2人ががんばってるのに何もしないのは怒られそうだし、これぐらいなら俺にもできることだし、……ちょっと大変なのは目に見えたけど、ちょっと、だから
その分ごはんいっぱい食べよう。



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