notオンザステージ
「俺の仕事、おわり」
「お疲れさまでした。ありがとうございます!こんなに素敵な告知ポスター……」
夏祭りの開催決定から数日がたって、俺は自分の仕事、ポスターを描く。と無事にやり遂げたわけである。やったね、おめでとう俺。
これで開放された。と思いながら教室までの道のりを、3人で歩いていく。
「参ったな、参ってしまったね」
「無理なら諦めた方がいい。開催に支障が出ても困るから」
教室に入ってすぐ、そんな声が聞こえてきて、なるべく面倒ごとはもう避けたくてしれっと2人と距離をあけて早々に自分の席に座る。
「よ、宋壬。いいのか、こっち来て、あっちに生徒会集まってんぞ」
「おはよう、……いいよ、俺の仕事終わった」
「ポスターだろ?見た見た」
前の席にいる冷慈がお疲れ。と声をかけてくる。
ほんと、お疲れだよ。俺。ポスター一枚しか、書いてないといえばそれまでだけど、一枚は書いたんだから。
「おはようございます。……何かトラブルですか?」
聞こえてきた草薙さんの声をシャットダウンするように俺は寝る体制をとる。
もう嫌だ、熱い、溶ける。
「夏祭り開催の告知をしたんだけれど、生徒からステージを設置しろと要望が来た。でも現状の作業で手一杯なんだ」
「ステージですか」
あぁ……確かにお祭りとくれば、ステージはつきものの気がする。
どうしよう。俺、一応提案者だ。と寝る体制でちょっと頭を回す。
でも寝起きの脳みそがうまく動くわけもなく、ただ寝ているだけになっている。
「残念ですが、今回は……」
うんうん、しそうしよう。それがいいよと心の中で思いながら、動きはしない。
面倒ごとは避けよう。と思っていたら、草薙さんが俺の考えと、さっきの自分の発言を裏切ってくれた
「絶対にやりましょう」
「……え」
思わず起きてしまった。
「……え?今、完全に諦める空気だったよね」
バルドルさんの意見に俺も頷く。そうじゃないと溶けちゃう。
「気のせいです」
「そ、そう?」
「そうです」
ちらっと見れば、月人さんがやる気に満ちたような顔をしていて、納得した。
あぁそういうことか。と。
だからと言って、俺が動くかはまた別の問題。
「だったら構わないけど……具体的にはどうするつもり?」
「私たちで処理します。任せてください。それで構いませんよね、月人さん宋壬さん?」
「え」
「構いません」
ナチュラルに俺の名前をいれてくるあたり、やっぱり草薙さんは策士だ、あなどれない。
驚く俺を見て冷慈が笑いをこらえてる。あとでお弁当を全部奪う。
「ずいぶんと頼もしいね。そういうことなら頼んだよ」
「生徒の希望に添えるのなら、それに越したことはないからな。3人とも頼んだよ、3人とも!」
「え、だから」
「了解しました」
「はい!」
どうやらもう俺の拒否は聞き入れてもらえないようで、流されるまま、お手伝いすることになっていた。
どうしよう役に立てないけど、絶対。
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