だからさ、それ、いらなんだってば

起きたらもうすぐお昼だったということもあって、俺は柊さんに教室に戻るように促され、嫌な気分のまま、教室へと戻っていく
おかしいな、いつもなら寝たら忘れるのにな。と枷ではなく、つけられた指輪を恨めしく見ながら歩いて戻る。


「待たせたなァ!アホロンと一緒に対策を考えたんだよ〜!」

「何も持っていませんが……あ、おかえりなさい。大丈夫ですか?」

「うん大丈夫じゃないけど、大丈夫……」


なにやらロキくんが得意げに対策とか言ってるあたり、戻ってこないほうが良かったかもしれないと本能で悟る。
きっとまたロクでもないことなんだ

ロキくんはスッとピンクの表紙のノートを取り出す。そこには『恋愛マニュアル』の文字が書いてあって、思わず溜息を吐いた


「マニュアル?」

「イロイロな恋愛シチュエーションを書き記した貴重なノートだよーん。クラス全員の知恵と希望に溢れた一品☆」


クラス、全員?とふと疑問に思って、ロキくんに質問をする


「クラス全員、って、冷慈たちも?」

「いやぁ〜冷慈ちんたちはみーんな書いてくれなかったケド!」

「……」


それを聞いて、思わず、親指を立てたグッドサインを冷慈達3人へした
その三人からもグッドサインが帰ってきたけれど。


「まぁまぁ、古今東西の神様の恋愛技法が満載なワケだ。早速、試してチョ?んじゃ、ガンバァ〜!」

「どうも……」


神様の恋愛技法?じゃあ俺には関係ないや。と冷慈達のほうへ避難しようとすると、あのワインの神様にちょいっと首根っこをつかまれた


「だめだよ〜キミも参加しなきゃね〜」

「……」


冷慈をじっと見れば冷慈はワインの神様をじっとにらみつけているようで俺の視線には気づいてくれなかった。


「ちょいちょいちょーーーい!!!!!!」


その代わり、また、別の救世主が俺を助けてくれた。今度は知ってる人だった。
その人を見た瞬間、3人がゲッと声をもらした。


「誘拐犯でーす!隊長!弟さんが誘拐されてます!」

「……何っ!ホモか」

「兄さん、真顔で!」


突如現れた女子高生(?)3人組に神様達と草薙さんは驚いているようだった


「「「姉ちゃん!!」」」

「……姉さん、遊んでないで、助けて」


さっき、大声でちょいちょい言ってくれた最初の救世主は麗菜姉さん。冷慈のお姉さん。
それから、隊長とか兄さんって呼ばれたのが俺の姉さん、小柚希で、こゆき。
ケラケラと笑っているのが双子のお姉さん、美月ちゃん。


「弟よ、私は忙しいのだ」

「兄さん、それ私利私欲のためだ」

「ちょとそこの葡萄頭の兄ちゃんよぉ、その子返しちゃあくれませんかねぇ?あぁん?そいつぁ俺の癒しだぞコラァ」


まるでチンピラのような喋り方をしながら麗菜姉さんが俺をワインの神様から助けてくれた。
ワインの神様は完全に麗菜姉さんに負けてグイグイと壁際に追い詰められていた

麗菜姉さん、その喋り方にそんな詰め寄ってちゃ……


「うっはぁー!チンピラだなぁ!」


また聞きなれた声がして、今度は金髪のリーゼントの碧眼のお兄さんが、クックックと笑いながら出てきた。
この人は姉さん達といつも一緒にいるルアさん。
いい人だ。見た目はそれこそヤンキーだけど。


「よっ!チンピラスケバン!」

「お前等!しのごの言わんでよろしい!宋壬をいじめたこいつらをぶっ飛ばすのが先だぁあああ!離せよぉおおルアめぇええ!」

「あはは、ごめんな〜紫のなんか可哀想な兄ちゃん、こいついっつもこんなんだからさ〜」


チンピラさながらの悪顔をしてワインの神様にくってかかろうとした麗菜姉さんをルアさんが背後から羽交い絞めにして押さえ込んで、楽しそうに笑いながら謝っていた。
今日もこの4人は愉快でうるさいなぁ。とあくびをする。


「……そういえば、どうして、姉さんいるの」

「今更かよ、我が弟」

「うん」

「……、それは私が神に選ばれたからだ」

「……あぁ、俺達と一緒なんだ」

「……みーちゃん、宋壬もだって」

「うん。クックック……相変わらず日白義家は会話がマイペースだなー」


美月ちゃんに笑われながら、眠気と空腹と戦っていると月人さんと目があった。
とりあえず頭は軽く下げておいた。どうも。と意味をこめて。

それから、ひとまずきっと問題児になるであろう4人の自己紹介があって、やっとこさ、俺はお昼ご飯にたどり着ける、と思ってたのに。


(え、なんで、教室で食べないの)

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