余計なお世話
ご飯を食べた俺たちはそのままの流れで、冷慈と尊くんと一緒に5人で登校することになった。
冷慈は尊くんのおかげで少し機嫌が戻ったようで、今は楽しそうに尊くんと草薙さんと話している。
「………………………」
「………………………」
俺と月人さんは特に話すこともなくて、ただ歩いているだけ。
「オハヨォ〜!お元気してたァ?いい感じィ?」
「ロキさん……どちらかというと困っています」
草薙さんが本当に困ったように現れたロキくんに返事を返していた。
確かに困るだろうけど、俺はこれ以上は動かないって決めてるし、どうしようもない、と俺は諦めてほしい。
「だね、どうだろうね。並んで歩く妖精さんとツキツキは、とても恋人同士のようには見えないから」
「キミたちのその距離感がイマイチだね〜。もっと近づいてみたら?」
皆が言いたい放題言っている気がして、草薙さんがもっと困ったような顔をしていて、冷慈が嫌そうな顔をしていた。
月人さんはいつもと同じで無表情だけれど
「手だよ、手ぇ!恋人なら繋げよぉー。宋壬んとでもいいんだからさァ」
「手を……?」
草薙さんは困った顔のまま自分の手を見てから俺を見てきた。
どうしよう。嫌だ。
女の子に失礼なのはわかっているけれど。
(こういうのって、ちょっと、違う気がする)
冷慈は、いるのも嫌になったようでひどく軽蔑した目で神様を一睨みして尊くんを連れてどこかへと歩いて行ってしまった。
困った、助けてくれそうな人物が。
「そのくらいできないと恋人なんてなれないよ〜ほらほら〜」
ワインの神様がそう、楽しそうに言ってきて、俺も嫌だな。この人達。と思った瞬間だった
「……そういうのは、そうやって他人がお膳たてをしてする行為じゃない、んじゃないのか」
刺すようなきれいでちょっと聞き取りにくい発音の声がして、その方を見れば、腰に日本刀らしきものを抱えた金髪で三白眼の人が、呆れたように見ていた。
髪型はなんだか冷慈に似ているような感じだった。
「ちょっとーアンタゼウスの創ったお人形サンでしょー?そんな偉そうなこと言わないでよー。この三人はーこの指輪を外すために恋人になんなきゃいけないんだからサー」
「……」
ロキくんの口から告げられたことを聞いても、その人は無表情のまま溜息を吐き、スッスッと手と指を動かしていた
(……手話?)
「ん?何?それ?」
ワインの神様が不思議そうに首をかしげるとその人は小馬鹿にしたようにフッと笑ってどこかに歩いていった
「もーなんだったのサ!ま、いいや!ホラホラー!手ぇ繋いじゃいなよ〜!」
「あーあ、わかってねぇのなーシュリアのお節介が入ったってのにー」
今度は、どこかで聞いた声が俺の真後ろから、聞えたから振り向けば、そこにはあの食堂でいたオレンジの髪の眼帯の人がいた
「今のは手話っつって耳が聞えない人間が使ってる会話の手段なんだぜー。あいつがなーさっきさー【そんなことで恋人になって、嬉しいのか?】って言ってたぜー。俺なら嬉しくねぇなー!んじゃ、俺あいつ追っかけなきゃだからさーじゃあねーん」
ニコニコとやっぱり愛想のいい笑みで手を振りながらさっきの人を追いかけていく。
どうやら友達らしい。
でも、あの二人のおかげで空気が悪くなって、手を繋ぐどころではない感じなので、俺が自分から、もうひとつ、余計に釘をさしておく
「……俺、どっちとも、絶対に繋がないよ。……言われたから繋いで、何になるの?」
周りが完全に凍りついたのを確認してから、行こっか。と草薙さんに声をかけて一人で歩き出せば、慌てて草薙さんがついてきた。
それに特に表情を変えずに月人さんも。
その後ろでさっきの神様たちがまた余計なお節介をしているとも知らないで俺はモヤモヤしたものを忘れて無心で歩く。
どこに向かってるのかはわからない。完全に足の赴くままだった。
「宋壬さん、月人さん、校舎はこっちですよ」
「はい」
「……二人とも、教室に行っててください。俺は保健室に行くから」
「宋壬さんどこか体調が悪いんですか?」
「……うん」
本当は体調は悪くないけれど、一応うなずいておいた。
指輪のことがあるから100m離れられないのはわかっているけど、どうしても一緒にいたくなかった
面倒くさい。なんだか、今の出来事で一気に全部面倒になってしまった。
さっきの彼等が言ったように本当なら、おかしいんだ、こんな指輪でこんなことをやらされてる、なんて。
なんでこんなことをしなければいけないのか。とグルグル考えていたらまた眠くなってきた。ただそれだけ。
「……そんなに教室と離れてないはずだから、きっと大丈夫」
「……わかりました」
「了解です」
二人には教室に上がってもらって、俺は柊さんのいる保健室へと朝から足を踏み入れる
「柊さん」
「お、珍しいな」
「寝ます」
「おいおい……まぁ、仕方ないか。話、聞いたぞ。面倒に巻き込まれたんだってな」
「……はい」
「……、無理するなよ」
やっぱり柊さんは優しいなぁ。と思いながらベッドにダイブしてすぐ、瞼を閉じた
(次はいつ、起きようかな)
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