呪われた気分

凍りついたその空気の中、ロキくんの声が響いてきた


「も〜、鈍感ちゃんたちも冗談キツいよッ!皆、ひいちゃってるじゃん。そ・れ・に、オレより目立っちゃダメでしょ」


そんな言葉を言いながら俺と月人さんのデコをつついてくる。
いたずら犯だ……。


「俺はいたって真面目ですが」

「……目立ってない」

「だぁ〜から、そこがダメなのっ!これはオシオキが必要だね」


いい予感がしないと察したのか俺を羽交い絞めにしたまま俺ではなく、冷慈がズルズルと後退した
……助かった……かな


「何するつもりですか?」

「アイをお手軽に学んでもらうの☆ちょい待っててね〜!」


冷慈の拘束から逃れて、ロキくんを遠巻きに眺めていると何やら工作をしているようだ。
一体何を作ってるんだろう


「嫌な予感がする……」


草薙さんが不安そうにつぶやいていた。わー……すごい。俺と同じこと思ってるんだ


「でっきあがり〜ん!コレを2人にあげちゃおぅ!」


そういって、ロキくんが俺と月人さんの手に何かをつける


「……指輪、ですか……?」


俺と月人さんの左手薬指に、金色の指輪が嵌っていた


「わ〜……綺麗だね〜」

「デショ〜?いやァ、恋人同士お似合いだね、ペアリング!」

「……?誰と、誰?」

「いや、だからッ!宋壬んと戸塚兄でしょッ」

「……え」


男同士なのになぁ。と思いながらも綺麗なそれを月明かりに反射させて遊ぶ。
恋人かぁ。面倒だなぁ。


「はいはいっ!アンタにはこっちねぇ」

「えっ!?」

「?」


草薙さんの驚いた声が聞こえて、見てみれば、草薙さんの左手薬指には銀色の指輪が嵌められていた。
わー……銀色も綺麗だ。


「…………お前、まさか」


トールさんが青ざめた顔でロキくんを見ていた。
……嫌な予感があったのかなぁ


「え、何です……?」

「いやァ、さすがトールちん。察しがいいねぇ〜!」

「……その指輪には妙な仕掛けがある」


……なんと……。いたずら犯はやっぱり捕獲しておくべきだったらしい。


「そ!それをつけているときは、半径100メートル以上離れられませ〜ん!離れると大変なことになるよん。もちろん簡単には指輪は外れない☆宋壬んと戸塚兄とアンタのどっかが心通わせて真の恋人になるまではッ!」


なるほど。それは大変だ。


「……それって、1人は、あまってもいいってことだよね?」

「あー、ダメダメ!確かに1人あまっちゃうけどォ、心通わせるのは3人の心が通うまでだからッ」

「……」


なんということだ。そんなこと俺には完全に無理難題だ。となんとなく落ち込んでみる。
実際は、特にこう、気にしてもいないんだけど
半径100メートルって直径200メートルだから、かなり距離あるのかぁ。としみじみ考えているぐらい。


「そ、そんなの困ります!」


草薙さんは困るようで、ちょっと慌ててその指輪をはずそうとしていた


「あァ!無理にそんなことしちゃ……!」

「きゃ……!!なに、これ……」


どうやら何かあったらしい。可哀想に。


「あ、ちなみに100メートル離れても同じようになるからねっ!」

「ロキ、早く外してあげて!」

「バルドルの頼みでもムリだよォ。外れないように作っちゃったんだから、真の恋人同士になるまではそのままなの」


だったら、とりあえずは仲良くしておいて、月人さんと草薙さんが恋人になってくれればいい。
俺には恋人とか絶対に縁がないし、よくある少女マンガのような悩んだり苦しんだりする展開はできないから。


「恋人……?それはどういう関係性を築けばいいのでしょうか。ここに来て一番難易度の高い命令です」


月人さんはやっぱり命令としてとらえているようで困惑している。
恋人なんか、なろうとおもってなれるものでは、ないと思うけれど……。
そう思っていると、草薙さんが何やら俺を見てきた。

なんだろうと、考えてみるけど、おそらく、俺の意見を聞きたがっているんだろうということにしかたどり着かなかった。


「……頑張れ〜……」


俺は二人に任せるよという意味をこめて応援をしておいた。
冷慈に後ろから叩かれたけど、なんでだろ。


(だって、俺に恋人とか無理でしょ……)

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