なるほど、わからん

今日も、いい日差しだった。だから、寝ていた。たぶん起きたのはお昼ご飯のときだけだったような気がする。

長い時間、ゆっくり寝ていたら、もう放課後だった。
俺はアポロンさんや草薙さんに連れられて、仮、である生徒会へきていた。


「月見……。確かに秋の行事です」


草薙さんの提案で秋の行事は月見はどうだろう、という話になっていた。
お月見か。お団子が食べれる俺には嬉しい行事だ。
俺はハロウィンも好きだけれど、アレは双子と冷慈には苦い思い出があるから提案しないほうがよさそうだ
何年か前にみんなでしたときに、グルーガンさんや柊さんがやたらとリアルで、皆でかなり恐がったことを思い出したから。


「具体的には何をするの?」

「満月の頃にススキという植物や、月見団子、栗といった食べ物を供えながら夜空に浮かぶ月を眺めるんです。派手さはありませんが、賑やかなものとは違った良さがあります」


確かに派手なことでは、ない。
賑やかでもないし、でも俺はそのほうが好きだ。うるさい人もいっぱいいるだろうけど、そのときだけ黙らせてしまえばいいのである。


「満月を愛でる行事だなんて、情緒的だね。それに今までと違う種類の行事という点にもとても惹かれる」

「月見いいね、月見。うちには月を司る神もいることだし、僕も興味あるな」

「どうでしょう、月人さん宋壬さん」

「問題ありません」

「……団子、食べれるから、いいと思う」


それから、お月見をする日まで、皆で役割を分担して準備をしていくことになった。
俺は、仮といえど、一応生徒会らしいので、広報らしく月見をすることの告知用のポスターを描くことになった。
何を描けばいいんだろう。やっぱり月かな。


「月人さん、宋壬さん、私の作業に付き合ってもらえませんか?」

「構いませんが……俺は何をすれば?」

「……簡単なことしか、できないよ、俺」

「それは……」


草薙さんに連れられて、俺と月人さんは学園の外へと行くことになった。
お月見だし、ススキを探したいらしい。
ススキかぁ。それよりお団子がいいなぁ。


「この世界にもススキが……あるいは近い植物があるといいんですが」

「箱庭の生態系は謎が多い。最悪、購買部に請求するべきでしょう」

「……じゃあ、そうした方がいいんじゃ……簡単だし……」

「いえ、探してみて、どうしても見つからなかったときはそうします」


綺麗な夕焼けの中探してみてはいるけれどそれらしきものは、見つからない。
もう購買部でいいじゃないか。と思うものの、草薙さんはそれじゃダメ、らしい。
困ったな。俺、眠い。


「うん……」

「ええ」


それから、俺は睡魔もあって、誰も何も喋らない空間が続いていた


「月人さん、今朝のウサギは使い魔だそうですね。白くて、フワフワですごくかわいいですね!今度触らせてください」

「ええ」

「ウサギのこと可愛がっているんですか?」

「ええ」

「……………名前はうさまろなんですよね?」

「ええ」


話をぼんやり聞いていると、月人さんはウサギを飼っているようだ。
いいなぁ。ウサギか。おいしそうだ。


「…………、宋壬さん、宋壬さんは、食べることがお好きなんですか?」

「……?ううん、そうじゃないよ。でも、食べないと人間って生きていけないから、俺、食べてる。お腹すくから」

「お好きな食べ物ってありますか?」

「うーん……食べれるものは全部……」

「……嫌いなものは?」

「……美味しくないのは食べない……」


言われたことに対する答えだけを返していると自然と会話がなくなった。
無言のままずっとあたりを練り歩いている。二人はススキを真剣に探しているようだ。
俺はただ歩いているだけだけれど。


「お二人とも、向こうも見てみましょう」

「了解です」

「……うん」


面倒だな。と思いながらも仕方なくうなずいた。
帰りたいな、食堂に行きたいしシャワーあびて少し寝て、月を見たい。
如何せん、ポスターに月を描きたいのだから少しでも観察したい。


「うわぁ……」


森を抜けると、もう回りは暗くて、流れている小さな川が僅かに月明かりを反射していた。
思わず、声が出てしまうほど、俺には神秘に見えた。


「見てください」


月人さんの指さした先には、ススキが生えていた。
あるもんなんだ


「あ、ススキ」

「……おー」


とりあえず、草薙さんにあわせて、声を出しておく。
別になんとも思えないけれど、少し、嬉しそうだ草薙さんが。


「月人さん、ありがとうございます。見つけてくださって」


嬉しそうに草薙さんは、月人さんにお礼を言った


「…………?どうしてどんなに嬉しそうに笑うのですか?俺をここへ連れてきたのは君です。感謝されることではありません。むしろ手柄は君にある」

「私では気づかなかったかもしれませんから。……ありがとうございます。宋壬さんも」

「??俺は一番何も、してない」

「いえ、お付き合いしてもらって、ありがとうございます」

「……あぁ、えーっと、はい」


変な人だ。こんな役立たずにお礼を言うなんて。
でも、一応、その言葉は受け取っておく。
言われて嫌、な言葉ではないから。



[ 20/40 ]

[*prev] [next#]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -