ゆるっとふわっと
次の日の朝、何気なく起きて、時計を見るともう少し登校時間まで余裕があった。
俺にしては珍しい。
寝ぼけた足で部屋を出てリビングといわれるようなところへいけば何故か冷慈がいて、テーブルにはおいしそうに朝ごはんが並んでいた。
「おはよう……」
「おう。ったく、朝ぐらい食堂じゃなくてこういうの食えよ。お前、ただでさえ人ごみも好きじゃねぇだろ」
「……そうだけど……」
頼んでも居ないけれど、冷慈は来てくれた。きっと、俺が早く卒業資格を得るために、協力してくれるのだろう。
流石、お人よし。
「ほら、食え。はよ行こうぜ草薙も待ってるんじゃね」
「あぁ……そっか」
ご飯を食べていると冷慈が俺の髪の毛をサラサラと触りながらいつものように結んでくれた
相変わらず変に世話焼きだ。
「生徒会、なんだろ。仮らしいけど。よくやるなー」
「……断わるのも面倒だった」
「あぁ……」
そういうことか。と言いながら少し嬉しそうに俺の髪をいじり終えれば、手ぶらのまま、俺の部屋から出て行った。
(朝ごはんと髪の毛しにきただけ……。お母さんみたい……)
お母さんといえば、彩詞のほうが当てはまる気もするけれど、冷慈も今の動きは、うん。
お母さんだ。
「おいし……」
卵焼きは綺麗な色でとてもあの不良面から焼かれたものとは思えない。
まぁ、中身がまじめなところもあるし生活力あるからできて普通と言いそうだけどいつもやっぱり違和感が残る。
あと、罪悪感。
(俺は、冷慈に何もしてあげてもないのにね)
でも、これは冷慈が勝手にしてくれてることだから、と考え直して、いつものペースで口へご飯を運ぶ。
ゆっくりしすぎたせいか、もう遅刻間近の時間だ。
「あ、着替えよう……」
制服を着て、鏡と向かい合う。今日も、俺はまだ、綺麗。
これから時間が過ぎるたびに、年をとるたびに皺ができて、シミもできて、おじいちゃんのようになってしまうのか。
(……あ、でもここは不老、なんだった)
思い出した事実に安心して、結ばれた髪の毛を少し整えてから部屋を出た。
(そういえば、秋の行事って、何かあったかなぁ)
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