覚えてない、でしょ

「あの、冷慈さんもいつも宋壬さんと、いますよね……?」

「ん?あぁ、そりゃ、まぁいっつも半分こしてっからな」


そう、俺と冷慈の半分こ条約。そこは覚えているのに、冷慈は肝心なことだけを忘れている。
深紅の俺の色に上乗せするように、何もない俺に継ぎ足したのは、少しの感情と、哀楽。
喜怒はちょっと俺にはまだわからない。


「半分こ……ですか?」

「こいつ、昔はもっとひどかったんだよ。喋らないっつうか、笑わないし怒らないし、泣かないし。まるで人形みたいな。だからな、色々あってな」

「……そう、だったんですか」

「流石にそのまんまじゃいかんと思って、俺が言ったんだよ。嫌なことは半分俺によこせ、俺の楽しいことは半分お前にやるって。それがなんだかやめるにやめれねぇな、ってなってるから、な」

「うん、そうだね」


俺と冷慈の約束。いつか、俺が、心のそこから喜怒哀楽を表現するまでは、これはやめない。と。
俺と冷慈というよりは冷慈が勝手に決めたものだけど。


「あの、宋壬さん……実は卒業見込みがなくて……トト様に、その"人間への理解"をしろと言われたのですが……」

「……。おい、なんでそれ俺に言わなかったの」

「え、だって言うほどのことじゃない……」


なんだか冷慈に文句を言われてしまった。まぁ、仕方ない。
俺自身、興味もない話だったから話さ無かっただけだし俺は悪くない。


「あの、それで……お聞きしたいんですけど……宋壬さんは、どうしたら、人間に興味をもって、もらえますか……?」

「……」

「おい、宋壬、聞かれてるぞ」

「え……俺?」

「今のはどう考えてもお前だろ」


少し考えて、空白の頭に文字を並べる。
それをひとまず不快にさせないように並べて、言葉にだした


「不老で欲がなくて、綺麗な人になら、興味、あるよ」

「お前またそんなこと言って……」

「なんかそれ、あにぃみてーだ」


(あぁ、確かに、月人さんみたいだ)

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